各国も警戒、日本の「中国人留学生スパイ」の実態 悪意なき学生を利用するアメとムチの手口

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では、中国人留学生は“悪”なのか。

中国では、海外の留学先で高度な知見を学び、その後中国に帰国し、国のために還元する留学生を「海亀」と呼ぶ。この海亀が悪意なくスパイ活動を余儀なくされる場合がある。

例えば、留学した当初は、スパイ活動(技術窃取)をする意図を持っていないにもかかわらず、留学した先で第三者(中国在外公館関係者や当局)に接触され、要求に従わざるを得ない状況に陥り、技術を窃取し帰国するケースがある。

中国の国家情報法は、国の情報活動に協力することを国民の義務と定める。中国当局に要請されれば拒否できない。

典型例となる事件があった。2021年4月、警視庁が2人の中国人を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で書類送検した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)など200に上る組織が2016年から2017年にかけて大規模なサイバー攻撃を受けた事件において、サイバー攻撃に使用された国内のレンタルサーバーを偽名で契約・使用したとの疑いだ。

書類送検された中国人の1人は中国人の元留学生、王健彬。王は、レンタルサーバーを契約するよう人民解放軍サイバー攻撃部隊「61419部隊(第3部技術偵察第4局)」所属の女性軍人から頼まれたという。王が以前勤めていた中国国営企業の元上司が、王と女を繋いだという。王は女性軍人に国に貢献しろと脅されて加担してしまったのだが、当初、王に悪意はなかった。

このように、悪意なき中国人留学生が、外部からの接触により、加担せざるを得ない状況に追い込まれている状況は多い。

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