かつて一世風靡の「エレッセ」、存続かけた大刷新 テニスウェアらしくない「斬新カラー」で勝負
かくして、ブランド存続の危機に立たされたエレッセ。その再生を託された重松氏は、入社から十数年間にわたってノースフェイスなどの販売畑を歩んできた人物だ。2021年に商品企画担当として本社のエレッセ事業チームに加わり、翌年にブランドの責任者になった。
「今のまま続けるのは難しい。事業(販売)をいったんストップし、もう一度ゼロからこのブランドをどうすべきか考えてほしい」――。経営陣からの命を受け、重松氏ら事業のメンバーたちは新たなブランドの方向性を議論しながらプランを練り上げ、何とか上層部からゴーサインを取り付けた。
ブランドを一から作り直すため、カジュアル衣料は撤退し、原点のテニスウェアに専念することにした。目指したのは、従来のテニスウェアのイメージを塗り替える、美しさを追求したウェアだ。
着用した人をキレイに見せる色使い
リブランディングに向けて新たな方向性を練るために徹底的な市場調査をしたところ、テニス愛好家の多くが、既存のテニスウェアに強い不満を抱いていることがわかったという。一番の不満は、その見た目、デザインに関するものだった。
「どのブランドも似たようなウェアばかりで、選択肢がなさすぎる」「デザインのセンスが古すぎて、着たいと思わない」。とくにファッション感度の高い女性たちから、こうした回答が相次いだ。テニスウェアのデザインが嫌で、コート内ではヨガなど他用途のスポーツウェアを着用している女性が多いこともわかった。
そこで、従来のテニスウェアに不満を持つ人たちが着たいと思うデザインを考えた。
コンセプトは「スポーツウェアの美しさにこだわる」。色と人間が感じる印象について筑波大学の教授と共同研究し、その研究結果を商品のデザインに反映した。新エレッセが採用した、ややくすみがかった特徴的なカラーは、「着用した人がもっとも美しく見えるよう考え抜かれた色」(重松氏)なのだという。
デザイン以外でも、UVカットや通気性などの機能は当然として、プレー中の動きを解析してラケットが振りやすく、快適に動けるパターン設計を採用。体を美しく見せるカッティングにも配慮した。また、素材自体も肌触りや質感のよいものを厳選し、一部の商品はイタリアの特殊な機械で編んだ高級生地を使用するこだわりぶりだ。
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