かつて一世風靡の「エレッセ」、存続かけた大刷新 テニスウェアらしくない「斬新カラー」で勝負

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「エレッセ」のブランド名に、「ああ、懐かしい」と若い頃を思い出した中高年の読者は多いはずだ。日本が空前の好景気に沸いた1980年代から1990年代前半、大学生や若い世代の社会人の間でスキー、テニスが大流行し、まぶしく輝いていたブランドがエレッセだった。

エレッセの1990年当時のテニスウェア
エレッセの1990年当時のテニスウェア。若者たちの間で大人気となり、ブランドがもっとも輝いていた時代だった(写真:ゴールドウイン)

当時のエレッセはスキー、テニスウェアの両方で若者たちから絶大な人気を集め、飛ぶように商品が売れた。その人気はコート内やゲレンデにとどまらず、街中でもパーカーやトレーナー、ニットなどエレッセのカジュアル衣料を好んで着る若者が多くいた。ゴールドウインにとって、文字通りのドル箱ブランドだった。

しかし、それからおよそ30年。この間にエレッセは市場の急激な縮小を受け、2011年にスキーウェアから撤退。残ったテニスとカジュアル衣料も売り上げは年々減少した。とくに近年は販売不振が極まり、事業の継続が難しい状況にまで追い込まれていた。

今回の全面刷新は、まさに国内におけるブランドの存続をかけた施策なのだ。

百貨店とともに衰退し、顧客も高齢化

一時代を築いたブランドがなぜ、そこまで衰退してしまったのか。

まず、国内のテニス人口自体がピーク時より大幅に減少したうえ、ユニクロなど安価で機能性の高い運動着が登場し、テニスを楽しむ人たちが以前ほどテニス専用のウェアにこだわらなくなった。しかもエレッセは歴史的にカジュアル衣料の比重が高く、純粋な競技用のウェア以上に、そうしたファッション関連の落ち込みが激しかったという。

かつてのエレッセは百貨店のスポーツ売り場を最大の販路とし、バブル時に大きく売り上げを伸ばした。その後も百貨店中心の商売を続けた結果、顧客層がどんどん高齢化し、若い世代が知らないブランドになってしまったのだ。多くの老舗アパレルブランドが、百貨店の地盤沈下とともに衰退の道をたどったのとまったく同じ構図と言える。

もちろん、ゴールドウインもそうした状況に危機感を抱き、何度もテコ入れ策を試みた。

ストリートファッション路線に走った頃のエレッセ
若者の開拓を目指し、数年前にはカジュアル衣料でストリートファッション路線に走ったが、失敗に終わった(写真:ゴールドウイン)

近年で言えば、若者を取り込もうと、ヨーロッパでのエレッセを参考にカジュアル衣料でストリートファッション路線を打ち出し、2020年にはその専門新業態の直営店を渋谷のレイヤード ミヤシタパークに出店。が、コロナの影響もあって客足はまばらで、出店からわずか1年で撤退を余儀なくされた。

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