80代高齢者から荒稼ぎ、三木証券のあきれた実態 口座数減で業績低迷の小規模証券会社が暴走

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2019年6月に営業員評価制度を見直し、手数料収入実績を評価に直接反映するようにした。2022年1月には法令違反行為などを行った営業員の評価を下げる仕組みを撤廃。手数料収入に偏った不適切な営業を助長するような評価体制に移行していった。

こうした制度変更に批判的な社員に対するパワハラまがいの行為も横行していたという。営業車の使用を禁じ営業成績が下がったところで、降格処分をしていた。

外部からの指摘にも耳を傾けなかった。2018年には自主規制機関である日証協の検査で、コンプライアンス部門の人員不足を指摘されていた。

それにもかかわらず、赤字体質からの脱却と継続的な黒字化を図るため、社長自らが主導してコンプライアンス部門の担当社員を削減。2018年9月に14人いた監査部の社員が2022年9月には6人になっていた。

結果、日証協の高齢顧客ガイドラインで定められた確認事項も十分に確かめることなく「承認手続きは形骸化していた」(監視委勧告)。

顧客説明は正式処分後に

こうした状況に、日証協幹部もため息をつく。「顧客からの信頼がすべての地場証券でこんな営業をしていると広まったら、顧客はすぐに逃げていく。なぜここまでひどいことになったんだ」。

裏を返せば、背に腹を変えられないほど追い詰められていたのだろうか。

三木証券は、監視委が勧告を出した9月15日に「厳粛に受け止め、深く反省し、根本的な原因分析とその改善を図り、(中略)再発防止に努めてまいります」とのコメントを発表した。

ただ、コンプライアンス体制の見直しや顧客への説明といった具体的な対応は、金融庁からの処分を待ってから行う予定だ。

過度に手数料収益を追う施策をやめた後、経営を安定させられるかは未知数だ。顧客層の高齢化や契約口座数の減少は、避けがたい現状として立ちはだかっている。道を誤った中小証券会社の更生はあまりにも厳しい。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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