「ブルシット・ジョブ」著者が遺作で切り込んだ相手 ベストセラー「ポップ人類史」を根本から批判
「ポップ人類史」を根本から批判
『万物の黎明』のひとつのもくろみは、ユヴァル・ノア・ハラリやジャレド・ダイアモンド、スティーヴン・ピンカーなどのベストセラーの著者たちのテキスト、いわゆる「ポップ人類史」を根本から批判することにある。かれらへの言及と批判は、本書の随所にあらわれる。
かれらのほとんどが、人類学にも考古学にも門外漢である。しかし、かれらは人類学や考古学の領域でのめざましい近年の発見をつまみぐいしながら、旧来のパラダイムに巧みに適合させた著作を書いている。そしてそれによって人は、世界の見方を揺るがせにすることなく、新奇な発見をたのしむことができる、と。その批判は、辛辣である。
「わたしたちの議論展開に性急さのようなものが感じられるとしたら、その理由は、現代の著述家の多数が、ホッブズやルソーといった啓蒙時代の偉大な社会哲学者の現代版はわれなりといった風情で、おなじ壮大な対話を(ただし、かつてよりもより的確な登場人物でもって)演じてたのしんでいるようにみえるからだ。
この対話が依拠するのは、わたしたちのような考古学者や人類学者をふくむ社会科学者の経験的知見である。しかし、実のところ、かれらによる経験的知見の一般化の質はとても向上しているとはいいがたく、いくつかの点では劣化してさえいるようにおもわれる。いずれの時点かで、子どもたちからはおもちゃをとりあげなければならないものなのだ」
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