「数字とファクト」で経営する社長が残念な理由 一流の経営者はなぜナプキンに図を描くのか

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ビジネスにおいて、数字やファクトは確かに重要です。数字がなければ自社の現在地や今後の展望がわかりませんし、ファクトがなければ、世の中の変化や顧客ニーズに気づくことができません。競争や変化が激しい現代社会において、これらを蔑ろにして経営を考えることは不可能です。だから、経営を考える上で、数字やファクトが必須であることは、間違いありません。

ただし、それだけでは不十分です。なぜ不十分なのかと言うと、ファクトや数字だけでは「本質」も「未来」も見えないからです。

エクセルに並んだ数字だけを見ても「上がった」「下がった」の議論しかできません。新聞や雑誌に書かれた記事(ファクト)を読んでも、現象、つまり結果論しかありません。

つまり、どれだけ数字やファクトをもとに経営について考えても、それは、表面上に見えている現象や過去(結果)をこねくりまわしているだけに過ぎないのです。

繰り返しになりますが、数字やファクトは重要です。経営を考える上で欠かせません。しかし、新しいサービスや戦略を考えたり、組織マネジメントを考える上で、より「本質」に迫り、「未来」を構想するためには、数字やファクトをもとにした左脳的思考だけでは無理があるのです。

そしてよくある過ちが「経営についてうまく考えられないのは、数字やファクトの量が、まだ足りないからだ」と、さらにその量を求めようとすることです。いくら数字やファクトが書かれた資料を分厚くしても、良い結果を生むとは思えません。下手をするとどんどん悪循環に陥ります。考えるべき要素を数え上げ、情報収集に走り、集めた情報に溺れて、さらに混乱してしまう。まったくの逆効果です。

なぜ「図」を描いて経営を考えるべきなのか

経営を考える上で、数字やファクト以外に必要なもの。より「本質」に迫り、「未来」を構想する上で欠かせないもの。それは「図」です。

ビジネスは様々な要素の関係性で成り立っています。そんなビジネスを取り巻く豊かな関係性は、左脳的な文字や文章、数字だけで捉えるには無理があります。関係性を解きほぐして原因に迫り、本当に正しい意思決定をするためには、もっと感覚的に、イマジネーションを膨らませて右脳的に見て、考えるのが効果的です。その方法が「図を描いて考える」ことに他なりません。

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