「数字とファクト」で経営する社長が残念な理由 一流の経営者はなぜナプキンに図を描くのか

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図を描いて経営を考えることの効用は、単なる私の思いつきではありません。ビジネスにおいて、図がすさまじい威力を発揮した幾つかの具体例をお話ししましょう。よくビジネスの成功物語には、ナプキンの裏に描いたメモが出発点になったというエピソードがついて回ります。これは典型的な、図を描いて経営を考えて大成功した例に他なりません。

たとえばアマゾンの創業者ジェフ・ベゾスは、ナプキンの裏にループ図の成長モデルを描きました。GEの中興の祖ジャック・ウェルチは、ナプキンの裏にベン図の事業構想図を描きました。格安航空会社の基礎を築いたサウスウエスト航空の創業者3人は、ナプキンの裏にダラス・ヒューストン・サンアントニオを結ぶ三角形のルート図を描きました。

これらは、経営学の本やビジネス書の中で、繰り返し語られる伝説的なエピソードです。そして実際に、彼らが描いた図がもとになって、その後世界を一変させるようなビジネスができあがりました。ナプキンの裏に描かれた落書きのような図が、成功の裏側にあるメカニズムそのものだったからです。

図を使うことで右脳的な思考も使える

ジェフ・ベゾスはオンラインで本を売ることを始めたから凄いのではありません。成長のメカニズムの本質を突いたから凄いのです。

ジャック・ウェルチも、市場でNo1、No2になるという事業の選択と集中を行ったから凄いのではありません。資源有効活用のための論理モデルを創ったから凄いのです。

サウスウエスト航空も、田舎で安い運賃の飛行機を飛ばしたから凄いのではありません。大手航空会社のハブ・アンド・スポークのルート設計に対して、点と点を結ぶピア・ツー・ピアという斬新なネットワークを持ち込んだから凄いのです。

もし彼らが図を描かずに、こんな風に経営を考えていたとしたらどうでしょう。

「ライバルのA社がこんなサービスを始めた。うちはどうする?」

「今期の売り上げが○○だった。じゃあ来期は△△でいいかな?」

このようにファクトや数字だけで経営を考えていては、今のような成功はなかったでしょう。そうではなく、図を描き、右脳もフルに使って経営を考えたからこそ、世界にインパクトを与える経営を実現できたのです。

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