国家権力も超える力を持つ「巨大IT」の"別の顔" 「グーグル、アップル、メタ、アマゾン」vs.国家
政府の報告書を読んでも、彼らのビジネスはまだまだ得体の知れないブラックボックスだった。しかし、政府関係者を取材すると、それは政府も同じだった。これまでとはまったく異質な企業を前に、政府ですら戸惑っているのだった。
彼ら巨大IT企業と渡り合える存在は、国家を統治する巨大機構、政府しかないように思えた。しかし、政府でさえ巨大ITの前では頼りなくみえる。選りすぐりのエリート人材、それによって生み出される、精巧なビジネスモデルと巨額のマネー。プラットフォームに集まる企業に課されるルールは、あたかも国家の法律のように機能し、そこに住む者を統べる。それに比べて国家のシステムは古くさく、時代遅れに思えた。
「巨大ITは独占禁止法(以下、独禁法)を一番、怖がっている」
そう聞いた私は、独禁法を所管する公取を精力的に取材した。しかし、「市場の番人」と呼ばれる公取であってもビジネスの全貌をつかみ、問題行為を法執行につなげるのは至難の業だった。彼ら巨大ITは強く、秘密主義だ。政府の言うことを素直に聞く相手ではなく、要求を無視することさえあった。
始まった国家側の反撃
そのうち政府=国家側の反撃が始まった。世界各国は独禁法の執行や規制強化で対抗。巨大ITは本性をむき出しにして抵抗し、国家と巨大ITの攻防は激しさを増した。
政府関係者は無自覚だったかもしれない。しかし私には、それはまるで国家が自らを脅かす存在を本能的に押さえ込もうとしているように見えた。
国家は司法、立法、行政の三権で統治されている。報道機関は政府を監視する役割を担う「第四の権力」と言われる。では巨大ITは?
グーグルの元CEO、エリック・シュミットらは2014年の著作『第五の権力』(ダイヤモンド社)でこう述べた。
「これからの時代は、誰もがオンラインでつながることで、私たち1人ひとり、80億人全員が新しい権力、つまり『第五の権力』を握るかもしれない」
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