国家権力も超える力を持つ「巨大IT」の"別の顔" 「グーグル、アップル、メタ、アマゾン」vs.国家
そんなGAFAの別の顔を垣間見たのは、ある大手通信会社幹部の夜回り取材(夜に自宅などで行う非公式取材)がきっかけだった。アップルのiPhoneを扱う日本の通信会社はアップルと契約を結んで供給を受けている。ある晩、何とはなしにその件を尋ねると、「それは言えない」。その人の口が一気に重くなった。強力な守秘義務がかかっているようだった。その人は慎重に言葉を選んで言った。
「なぜ日本のキャリア(通信会社)が、アンドロイド端末より圧倒的に安い値段でiPhoneを売っているのか。なぜ日本だけiPhoneがこんなに安いのか。考えればわかるよね」
iPhoneの過剰な値引き販売が問題となっていた時期。その口ぶりは、アップルから販売面で何らかの圧力を受けていることを示唆していた。禅問答のようなやりとりが続いた後、その幹部は「私は何も言っていないから」と念を押すように言った。
通信会社は、日本では巨大企業と言っていい存在だ。その幹部をここまで恐れさせるアップルとはいったい、どんな企業なのか──先進的でカッコいい企業、というイメージしかなかった私は、アップルの別の顔に触れた気がした。
複雑で、強く、秘密主義
その後、IT業界を取材していると、アップルやグーグル、アマゾンの周辺でさまざまな問題が起こっていることがわかってきた。しかし、そうした問題を調べようとすると、驚くほど手がかりが少ない。GAFAが自ら丁寧に教えてくれるわけがないし、そもそも彼らに取材を依頼してもほとんど答えが返ってこない。
いろいろな情報を当たっていると、唯一、確かそうな情報が見つかった。それは日本政府、経済産業省や公正取引委員会(以下、公取)が出した報告書だった。
おぼろげに見えてきた彼らのビジネスモデルは複雑で、わかりにくかった。彼らは消費者と企業をつなぐ場、プラットフォームを運営し、消費者が使うプラットフォームと、企業が使うプラットフォームという2つの顔を持つ。問題の多くは、企業向けの「顔」で起きているようだった。中小企業は巨大ITの世界で取引を失うのを恐れ、声を上げられない。取引企業の声は消費者には伝わりづらく、問題は見過ごされているように思えた。
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