ジャニタレCM対応、モスとJCBで明暗分かれた理由 消費者コミュニケーションの巧拙が問われた

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こちらは、ファンにとっては残念な結果であろうが、敬称付きの「JCBさん」と呼ばれていることからわかるように、SNS上で好意的な反応がメインだ。「今後も愛用する」などと前向きな感想も少なくない。

JCBのコメントが好評なのは、これまでの敬意を評して、まず「特別な存在」と表現しているところだろう。事務所うんぬんではなく、まずはタレント個人を評価する。そのうえで、条件を示すことで、今後の事務所対応によっては、起用再開の余地を残す。

具体的な言葉にせずとも、事務所とタレントの責任範囲を明確にしつつ、タレント個人との付き合いは排除しない。こうした「つながり」を重視した意思表明は、消費者の心に響く。少なくとも現時点では、「エモさ」がプラスに働いていると言えるだろう。

初手でキッパリした態度を示せるかがカギを握る

9月14日には、アフラック生命保険が、ジャニーズ事務所との広告契約を解除し、櫻井翔さんとの個人契約への変更を検討していると報じられた。各社報道によると、所属タレントの活躍の場が奪われてしまうことは遺憾だ、などとコメントしているという。こちらもJCB同様に、タレント個人を評価しているとして、ファンからは好感触を得ているようだ。

タレントを広告に起用する目的は、ブランドイメージの強化も当然あるだろうが、最終的には「ファンによる消費を喚起させる」ことだろう。その点、JCBの場合は、プラスに働いたと考えられる。

一方のモスは、新CM発表で期待させておきながら一転中止と、結果的にファンを振り回してしまった。店頭ポスターの件は、特定店舗での事案ということで、本部は把握していなかったのかもしれない。しかしながら、統制がとれていない印象を強めたのは否めない。

これまでネットメディア編集者として、あらゆる「炎上」や不祥事を見てきた筆者の経験からすると、一度「ブレた」と思わせてしまった組織は、その後イメージ向上につながりにくい。限られた時間の中でも、初手でキッパリした態度を示せるかがカギを握る。

——と、ここまで書いてきたが、モスもまた、ジャニーズに振り回された立場であることを忘れてはいけない。会見以前から、すでに新商品のプロモーション展開に向けて、テレビを含めた広告枠を押さえていただろう。このタイミングで中止を余儀なくされれば、それなりの損害は確実だ。

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