死者増える「モロッコ地震」支援が遅れた最大理由 国王中心の「超中央集権的」体制のアキレス腱

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モロッコの国営メディアは、ヘリコプターが遠隔地に援助を空輸している映像を公開し、国王モハメッド6世は、「特に孤児や弱い立場の人々」に対して、迅速に避難所を提供し、家を再建するよう政府に命じたと述べた。

しかし、地震発生以来、政府は概して口を閉ざしており、救助活動に関する情報はほとんど発表されず、死傷者に関する最新情報もまれにしか提供されない。一部のモロッコ人はソーシャルメディアに、対応が遅く、調整されていないと批判した。

アトラス山脈のドゥアル・トゥニルト村の様子(写真:Sergey Ponomarev/The New York Times)

支援物資は政府からではなく、慈善団体から

10日、アトラス山脈のドゥアル・トゥニルト村では、3日目の夜を外で過ごす人々が、毛布、おむつ、水など、切実に必要とされている救援物資を求めて列を作った。しかし、その物資は政府からではなく、マラケシュの慈善団体からであった。

この近くで育ったアブデッサマド・アイト・イヒア(17)は、家族の様子を見に、働いているカサブランカから9日に急いでこの地域に戻った。政府の救助隊や救援隊の姿は見えなかったという。

ドゥアル・トゥニルト村
地震の影響が大きかったドゥアル・トゥニルト村(写真:Sergey Ponomarev/The New York Times)

「私たちはただ援助と人々の助けを求めています」と彼は語った。

20マイル(約32km)ほど離れた別の山村アズグールでは、電気も電話も通じず、外部に助けを求めることさえできなかった。暗闇の中で悲鳴を追う若者たちは、さらなる崩壊を恐れながら、瓦礫の中から自分たちの手で人々を救い出した。

村の導師であるアブデルジャリル・ラムグラリ(33)は、「人命救助を始めるのに誰も待たなかった」と語った。

地震で水汲み場が壊れたため、村人たちは使える井戸を探すために何キロも離れた場所まで行かざるを得なくなり、絶望感が高まっていた。

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