パキスタンの「洪水」ここまで深刻にした真犯人 再建には推定100億ドル、10年はかかる
パキスタン各地で激しい洪水が発生している。洪水が山腹を削り、建物を根こそぎ押し流し、田園地帯で猛威を振るった結果、地区全体が内陸の海と化した。これまでに1100人以上が死亡し、100万棟以上の家屋が損壊・倒壊した。
3カ月以上雨が降り続いたため、パキスタンの農地の大部分が水没し、食料不足のおそれが出てきている。パキスタンにとって近年で最大の被害をもたらすモンスーン期となる可能性が高い。
最悪と言われた2010年の洪水よりもひどい
大きな被害を受けた山間部カイバル・パクトゥンクワ州のファイサル・アミン・カーン公使は、「ボートやラクダなど使える手段は何でも使って、最大の被害を受けた地域に救援物資を届けている」と述べた。「最善を尽くしているが、この州の被害は2010年の洪水の時よりひどい」。
その年の洪水では1700人以上が死亡し、数百万人が家を失った。国連の潘基文事務総長(当時)は、それまで見た中で最悪の災害だと述べた。
しばしば気候変動の被害を最も大きく受ける国の1つだとされるパキスタンにおいては、今年の夏に起きている危機は異常気象災害の最新の例に過ぎない。今年の春にはこの国を記録的な熱波が襲い干ばつが悪化した。
科学者たちはこうした熱波が発生する確率は人為的な地球温暖化によって、温暖化がないとした場合に比べて約30倍に上昇すると結論付けていた。現在パキスタン国土の大部分が水没している。
現在の降雨や洪水がどれほどまで気候変動の影響によるものなのかはまだ科学的に明らかにされていないものの、南アジアを始めとする各地で地球温暖化が集中豪雨の可能性を増大させていることについては、研究者の間で意見が一致している。干ばつと格闘している地域が集中豪雨に見舞われると、極度の渇水と極度の豪雨との間で急速かつ極端に振れ、その被害はとりわけ甚大になる。