パキスタンの「洪水」ここまで深刻にした真犯人 再建には推定100億ドル、10年はかかる
パキスタンのシェリー・リーマン気候変動担当相は、この水害は「前代未聞のスケール」の「気候変動がもたらした人道的災害」だと述べ、国際的な援助を呼びかけた。今年度の予算のうち気候変動担当相にはわずか5000万ドルしか割り当てられていない。これは政府が支出抑制に努める中、従来のほぼ3分の1の水準だ。
こうした中、会社経営者のムハンマド・サード・カーンは政府の補助金を期待している。彼はアフガニスタンとの国境に近いヒンドゥークシュ山脈を源流とするスワット川の切り立った河岸沿いに建つリバーデールリゾートのオーナーだ。このホテルの駐車場とメインの建物の一部はこの週末の洪水で流されてしまった。
「ホテルは川から離れた高台に建てられているというのに、川の水嵩が非常に高く、水が客室に激しく流れ込んできました」と彼は語る。「私たちは実際運がよかったといえるかもしれません」。
「最悪の事態がくるのはこれから」
パキスタン国家災害管理局によると、今年の洪水でこれまでに162の橋が被害を受け、2000マイル(約3200キロメートル)以上の道路が流されたという。パキスタン赤新月社のアブラル・ウル・ハク議長は、洪水と高温という組み合わせは、水媒介性感染症のまん延につながるリスクが非常に高く、「最悪の事態がくるのはこれからだ」と述べている。
パキスタンの回復力の低さ、そして繰り返し災害援助が必要になるのは、単なる脆弱な統治の問題だけでなく、過去から続く不正の問題だとの指摘もある。汚染する側の裕福な国々が、貧しい発展途上国が気候変動に対処するのを支援する義務について長年議論されているが、これが国際的な気候変動交渉における障害となっている。
パキスタンのような国々は、パキスタンを植民地化したアメリカやイギリスのような裕福な国に比べて、工業化がはるかに遅れている。
その結果、こうした国々は、長い間、世界を温暖化させている温室効果ガスのごく一部しか排出していないにもかかわらず、甚大な被害を受け、さらには現在の汚染を制限するために近代化のための高額な費用を支払うことを求められている。
ラホール経営科学大学の社会学教授であるニダ・キルマニ氏は、「洪水に関するいかなる救済も『援助』としてではなく、過去数世紀にわたって蓄積された不正に対する賠償としてとらえられるべきである」と述べている。
(執筆:Max Bearak、Raymond Zhong記者、Ihsanullah Tipu Mehsud記者)
(C)2022 The New York Times
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