ひざ痛の治療が糖尿病も治してしまう納得の理由 患者が向き合わなければならない「本当の原因」

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Ⅱ型糖尿病になったら、完治はしないので、「血糖降下剤」で血糖値をコントロールし、合併症にならないようにしていく。負の連鎖に気がついたお医者さんは、このように自分を納得させています。

いまのところ、この「対症療法」が標準的な治療で、薬を飲み続けるということは、自然界にない化学物質(異物)を摂り続けることですから、肝臓や腎臓にも負担をかけます。

そうです、向き合わなくてはならないのは、本当の原因の「食べすぎ」なのです。

お薬より「からだが自分で治る力」を信じよう

糖尿病を抱えながらも、ひざ保存療法の実践で「週一断食」に取り組んだ人がいます。

その方は、その日は経口血糖降下剤を飲まず、低血糖発作を避けるため緊急用に飴も用意して水だけを飲む一日をがんばりました。最初の感想は、「やってみたら、無理と思っていた絶食も大したことないやん。水がおいしく感じました」とのこと。他の日も食べる量が減ってきて、食べすぎが自然におさまり、ダイエットに成功。

血糖値も正常に戻った患者さんは、「原因を治す」体験をしたのです。意識がそこにとどまれば糖尿病の再発はないでしょう。もちろんからだに悪い副作用は何もありません。一方、糖尿病の薬を3年以上も飲み続けた方は、5年以上飲んでいた人で断食を行った方の成功談を聞いて、慎重にトライされました。お水をゆっくり、多めに飲んで、緊張せずにゆったりした気持ちで断食を行うことがポイントです。

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似たような対症療法の薬物治療の例はいくつもあります。

薬を処方されたら、どんな作用をもたらす薬かよく理解し、必要に応じて服用するのが自分のためです。

僕は、薬学部を卒業した後に、医学部に入り直して医者になりました。その専門知識をもとにしても、人が本来もっている「治る力」を化学物質でコントロールするのは、あくまでも一時的、最低限にとどめたほうがいい、と考えています。

またそれは薬だけでなく、手術などの医療行為においても同じです。

もちろん必要な手術もあります。僕も日々、最善の手術を行うために準備をしているし、自分が交通事故にあったときにも、必要な手術でいのちをながらえました。しかし、対症療法にすぎないものもあることを知っておきましょう。

巽 一郎 一宮西病院整形外科部長

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たつみ いちろう / Ichiro Tatsumi

医師。ひざのスーパードクター。1960年生まれ。静岡県立薬科大学薬学部卒業後、大阪市立大学医学部に入学。卒業後は同附属病院整形外科に入局し手術三昧の日々を送りながら、米国(メイヨー・クリニック)と英国(オックスフォード大学整形外科留学)などに学び、世界最先端の技術を体得。日本屈指の技術と、患者の立場に立った診療方針で全国各地から人が絶えない。評判の手術の腕の一方で「すぐには切らない」医師として話題を集める。湘南鎌倉総合病院人工膝関節センター長を15年務めた後、2020年より一宮西病院人工関節センター長に。

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