『賭博破戒録カイジ』の中では、カイジが地下労働施設でもらった給料の使い方で葛藤するシーンがある。一日の過酷な労働を終えた後、目の前にはよく冷えたビールと香ばしい焼き鳥の誘惑。欲望に流されるか、この環境から抜け出すためにお金を貯めるか、悩み葛藤する。私(くらま)も非常に好きなシーンである。
「あのシーンは、当時の自分には強烈に感じるものがありましたね。でも、カイジのように欲望に負けたら駄目だと思って、めちゃめちゃストイックに踏ん張りました。節約を続けていると、カイジにとってのビールや焼き鳥が、誰しも目の前に現れます。私は20年にわたって、ひたすらその誘惑に耐えてきました。今日を頑張るを続けてきた明日が今なんです」
明日から頑張るのではない、今日だけ頑張るんだ……その積み重ねが、絶対仕事辞めるマンさんの現在を形作った。
幸せのハードルが低いから何をしても豊か
こうして『賭博破戒録カイジ』の主人公・カイジに自分を重ねながら始まった超節約生活。
初任給は手取りで約19万円。その中から4万5000円のみを生活費として使い 、残りを全部貯金した(最初の3年間は、15万円のほうから奨学金を返済していたが、株で運良く儲かったタイミングで一括返済した)。会社の寮があり、家賃がかからなかったのも節約に大きく貢献した。
「寮はボロボロで本当にカイジの世界観でした。嫌がって出る人もいましたけど、私はそこで耐えましたね。家賃に5万~6万円使ってしまうと貯金ができないので。20年経った今でも家にはお金をかけていなくて、質素な賃貸に住んでいます」
社会人を始めて4~8月のわずか5カ月で、ボーナスも含めて80万円くらい貯めた。驚異的なスピードである。
「労働時間が長すぎて お金を使う暇も気力もないということもありました」
特に趣味もなく、娯楽費はほぼゼロ。そう聞くとなんの楽しみもない人生に思えるかもしれない。しかし、幸せのハードルが低くなったのは、長い目で見れば良いことだった。
「豊かさや幸せって相対的なものなのかなと。私の場合は会社が辛すぎて普段の生活が苦しすぎるので、ちょっとした休みでもそれだけでめちゃくちゃ嬉しいんです。食事も自分は何を食べてもうまい。幸せのハードルが低いから、何をやっても豊かなのかなとか思いますけどね」
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