「みんな50社くらい落ちるのが普通で、本当に就職が決まらないんですよね。落ちるのが普通の時代で。希望する会社に行きたいじゃなくて、とにかく何かで正社員になれればいいみたいな。私もそれに漏れず、とにかく何か受かればという感覚になっていました」
就職氷河期を象徴する出来事として、“逆学歴詐称 ”がある。それは、大学を卒業したのにもかかわらず、学歴を高卒と偽って公務員試験を受けることだ。その後、詐称が発覚して問題になったケースが全国で複数報告されている。
「みんななりふり構わず職を求めていた、そういう時代でした。就職が決まらず、非正規で働く人も多かったです」
今のように、フリーランスや多様な就業スタイルが増えてきた時代ではなく、就職=正社員の価値観の時代。そんな中で、真面目に努力を重ねて就職活動をしても、就職が決まらず苦労する人が多かった。
最終的に、絶対仕事辞めるマンさんは正社員での仕事が決まり、それが現在まで働いている会社である。しかし、安泰とはいかなかった。入社日には衝撃的な光景が待っていた。
「入社初日に、非常にブラックな会社だと知りました。社内では恫喝されている人がいて。私らの上の世代はバブルとか団塊の世代になるんですよね。彼らはモーレツ社員とか言われた時代で、怒鳴り散らすのも罵倒するのもごく普通。残業も当たり前。もちろん残業代は出ない」
かといって、新卒での就職が厳しい就職氷河期で、既卒からの転職はさらに厳しい状況である。絶対仕事辞めるマンさんは、いくらパワハラがあっても我慢するしか道はないと感じたという。
「絶望的な気分になりました。そこで脳のスイッチが完全に切り替わりました。ほかに行くところもないなら、ここで歯を食いしばって一生分のお金を貯めて逃げようと、それが今に至る超節約生活の始まりでした」
『賭博破戒録カイジ』の世界に自分を重ねた
当時、『週刊ヤングマガジン』(講談社)では、『賭博破戒録カイジ』 の連載をしていた。
「その頃のカイジは地下強制労働編だったんですよ。気持ちとしては、まさに自分も地下強制労働施設に来てしまった感覚です。そこから抜け出すために、カイジのように貧窮生活を耐え抜いて、私は“一生外出券”を手に入れよう、そんなことを考えた記憶があります」
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