「奨学金870万円」35歳女性の綱渡りな海外進学 「父の通帳は残高ゼロ」貧乏な家の娘が夢見た結果

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それでも、郊外のお金持ちの祖父母の持ち家に住んでいたことで、「食うものに困る」ほどの生活ではなかった。一方で贅沢できるような経済状況でもなかったため、父親は「中学校さえ出ればいい」という考えだった。一方で、母親は教育熱心で、家計が苦しい中でも大学進学を応援してくれた。

「お金がなくて学習塾に通えたのは1年間だけでしたが、それ以外の期間は通信教育で勉強して、私立の中高一貫校に受験で入りました。家計が苦しいときはこっそりアルバイトをして学費の足しにしました」

そんな川嶋さんには叶えたい夢があった。

「国連職員になりたかったんです。そのためには、英語力が必須と思い、通っていた学校の姉妹校であるアメリカの大学を目指しました。そのとき、奨学金を借りることを具体的に決意したんです」

志を高く持つ川嶋さんだが、塾にも通わず、留学経験もなかったため、現役での合格はできなかった。その結果、計画に綻びが生じる。

「なんとか仮合格という扱いで、1年間の語学研修を受けて、成績が良ければ入学が認められることになるのですが、それは大学が独自で設けている『語学学校』のようなコースだったため、日本の奨学金制度の範囲外だったんです。

海外の大学に行くのであれば、学費は自分の力でどうにかしようと考えていましたが、さすがにこのときばかりはお金の工面ができそうにないので困り果てました」

夢を叶えるべく、200万円の教育ローンを組む

資金がなければ海外に行くこともできない。そこで、川嶋さんは1年間の語学研修のために、日本公庫で200万円の教育ローンを組んだ。利率は奨学金とさほど変わらず、0.4%程度。また、アメリカの大学は全寮制のため、1年目はこの200万円で学費と寮費を賄うことができた(なお、本記事では貸与額を合算する便宜上、タイトルで「奨学金870万円」としたが、厳密には異なるものであることを記しておく)。

「そして語学留学から1年が経ち、ようやく大学に入学できたため、アメリカの奨学金制度を活用することにします。日本と違ってアメリカは貸与ではなく返済不要の給付型が一般的なため、『成績優秀者が対象の大学の奨学金』と、『年収600万円以下の低所得家庭出身者向けの奨学金』の2つを受給していました。これらの奨学金で4年分の学費と寮費はカバーできる算段でした」

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