「中国がダメなら他国に売る」が難しい納得理由 EU向けの基準に合わせた工場の設備投資が困難

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このような環境下で、大きな設備投資を伴うEU向けの輸出は容易には進みません。例外的にEU向けの輸出が進んでいる代表格は北海道のホタテ加工です。ホタテは資源管理がうまくいっていることにより、水産業では例外的に収益力があるので、早くからEU向けに舵が切れているのです。

EU向け輸出の2つ目の障害

「中国向けの輸出がダメなら、もっと市場が大きいEUへ」が難しい2つ目の理由、それは水産物に対するサステナビリティについてです。

EUは、サステナビリティに関して感度が高い市場です。特に流通業や外食産業といった、水産物の売り先が、持続性がない水産物を受け入れない傾向が鮮明です。

このため、売れない水産物は価値が低くなるため漁業者も資源管理に敏感です。さらに消費者の感度も高いです。流通業としてもサステナブルではない水産物は受け入れないといった、資源の持続性へ向けて競争が起きています。

日本でも、イオン、セブン&アイ・ホールディングス、生協といった流通業で、MSC(海のエコラベル)などの、国際的な水産エコラベルの扱いを増やすことを通じて、水産物の持続性を推進する競争が起きています。

サステナビリティを前面に打ち出す傾向が続くのは、とても良い傾向です。しかしながらこれからは、その中身も問われることになります。実際には水産資源の持続性につながっていないのに、それをうたって輸出していた場合はどうなるでしょうか?

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