「中国がダメなら他国に売る」が難しい納得理由 EU向けの基準に合わせた工場の設備投資が困難

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そのような場合は、「グリーンウォッシュ」や「SDGsウォッシュ」だとして、環境団体や消費者団体から、非常に厳しい批判を受けるリスクが高まります。そのとき「内容をよく知らなかった」は通用しないことでしょう。

それではどうすればいいのか?

水産物の貿易金額は年々増加しています。2022年は3873億円と過去最高金額を更新しています。日本政府としても輸出を増やしたい意向です。しかしながら、現在のように中国・香港で4割といった輸出先が偏った比率はリスクが高いです。

2014年にロシアがクリミア半島に侵攻後、世界第2位の水産物輸出国ノルウェーは、ロシアの輸入禁止政策により、隣国でもある最大の輸出先を失いました。しかしながら、ロシア向けがなくなっても輸出は増え続け、2022年は約2兆円と過去最大の輸出金額を更新し続けています。

輸出が止まってしまうリスク回避のためには、欧米をはじめ販売先が偏らないように分散することが重要です。ただし、欧米市場では水産資源の持続性が問われる市場なので、科学的根拠に基づく資源管理がされていることが条件となります。

資源管理ができて初めて、同じ土俵で自国水産物が安定して輸出できるようになります。また資源の持続性が確保できれば、必要な設備投資を進められるバックグラウンドができることになります。そして好循環が生まれ、かつてのように水産業が成長産業化していくことになるのです。

片野 歩 Fisk Japan CEO

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かたの・あゆむ / Ayumu Katano

早稲田大学卒。Youtube「おさかな研究所」発信。2022年東洋経済オンラインでニューウェーブ賞受賞。2015年水産物の持続可能性(サスティナビリティー)を議論する国際会議シーフードサミットで日本人初の最優秀賞を政策提言(Advocacy)部門で受賞。長年北欧を主体とした水産物の買付業務に携わる。特に世界第2位の輸出国であるノルウェーには、20年以上毎年訪問を続けてきた。著書に『日本の水産資源管理』(慶應義塾大学出版会)、『日本の漁業が崩壊する本当の理由』他。

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