「中国がダメなら他国に売る」が難しい納得理由 EU向けの基準に合わせた工場の設備投資が困難
上のグラフは世界の水産物の輸入数量データです。天然と養殖を合わせた世界の生産量は約2億トンです。グラフで読み取れる輸入数量は約4000万トン。水産物全体の生産量の約2割が、国際取引により輸入されていて、その数量は増加傾向にあることが一目でわかります。
なお下から2番目の赤が中国で、1番下の紫がEUとイギリスの合計となります。EUとイギリスを合わせた輸入数量は、加盟国が27カ国と多いこともありますが、中国よりもはるかに大きいことがわかります。
EUとイギリス向けは、今後、放射性物質の検査証明書や産地証明書の添付も不要になり、本来であれば輸出しやすくなるはずです。
主要国の水産物の輸出入金額のグラフを見ると、数量だけでなく輸入金額においても、EUとイギリスの合計は、中国より大きいことがわかります。
これらのデータを見ると、中国向けに輸出できないのであれば、EU・イギリスに向けて輸出することで対処できそうにも見えますが、そうはいかない事情があります。
EU向けの輸出が限定される理由
日本の水産物の輸入基準は、EUに比べて緩く、比較的容易に輸入ができます。日本は輸入する際に、EU側の施設に対して条件を課していません。
ところでEUから水産物の輸入は容易であっても、輸出となるとEU基準の食品衛生管理認証「HACCP」の認可を取得した施設からでないと輸出ができません。
上の赤の折れ線グラフは、「EU HACCP」の施設認可数の推移を示しています。アメリカ向けの輸出についてもアメリカ基準のHACCPが必要なのですが、EU HACCPの認可のほうが厳しいことは、認可数の推移が物語っています。
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