なぜ平等で格差が小さい社会ほど幸福度が高いか 「親ガチャ社会」の日本に未来がない納得理由

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ここで私が危惧するのは、日本という国ないし社会は放っておくと“固まりやすい”社会であるという点だ。したがって意識的な形で「機会の平等」に向けた政策を打っていかなければ、先述の「親ガチャ」という言葉に象徴されるように、格差が親から子へとそのまま引き継がれ、世襲的な傾向も増え、経済格差や「地位」が固定される社会になっていくだろう。“上級国民”などといった言葉が自然に使われるようになっているのもそうした一端である。

「人生前半の社会保障」の強化を

ではどのような対応が必要か。それは私が拙著『持続可能な福祉社会』(2006年)以降ずっと提案してきた「人生前半の社会保障」の強化、つまり子ども・若者への教育、住宅、雇用等あらゆる面での公的支援に他ならない(特に日本で不足しているのは10代後半~30代の若年層への支援)。

残念ながら、本稿の初めで言及した拙著『科学と資本主義の未来』でも論じたように、日本は他の先進諸国に比べてこうした「人生前半の社会保障」が低く、また公的教育支出も先進諸国の中で最低という状況にある。

したがって本稿で述べてきた平等ないし格差是正に向けて特に優先的になされるべきは、こうした「人生前半の社会保障」の強化を通じた、“個人が人生において「共通のスタートライン」に立てる社会”の実現である。それは個人の人生、あるいは社会についての「未来」への希望や信頼感にもつながり、日本における人々の幸福度ないしウェルビーイングを高めることにも寄与するだろう。

そしてこうした方向を現実に進めていくには、そのための「財源」についての議論が不可欠だ。私は上記拙著の中で、消費税と並んで相続税などの資産課税、あるいは高所得高齢者への年金課税等を強化し、それらの税収を子ども・若者に対する「人生前半の社会保障」にあてるという提案を行った。

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