なぜ平等で格差が小さい社会ほど幸福度が高いか 「親ガチャ社会」の日本に未来がない納得理由

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一方、本稿の初めで見たように、アメリカは先進諸国の中で最も経済格差が大きい国である。

アメリカの平均寿命の低さについては、公的医療保険制度の未整備、食生活やライフスタイル等さまざまな要因が関与しており、こうした話題については拙著の中でも論じてきたが(『持続可能な医療』『科学と資本主義の未来』等)、上記のような経済格差の大きさが重要な要因であることは確かだろう。

それは、貧困層などにとって医療サービスへのアクセスが保障されていないため健康状態が悪くなるといった点にとどまるのではない。

むしろ高所得層も含めて、上記のような強い競争圧力やストレス、不安等からさまざまな心身の不調や疾患が帰結するという点がポイントであり、それがここで述べている、「経済格差が一定以上のレベルを超えていくと、それは心身の健康にもマイナスに働き、全体として幸福/ウェルビーイングを低下させていく」という内容と重なるのである。

優越意識に由来する“幸福”をどう考えるか

以上、「経済格差が小さく、平等度の高い社会のほうが、マクロレベルでもミクロ(個人)レベルでも、幸福/ウェルビーイングが大きくなる」という議論を行ったのだが、これについては次のような反論もありうるだろう。

それは、「そうした側面もあるだろうが、同時に、人間は自分が“他者より上位に立っている”“競争社会を勝ち抜く”ことで一定の満足(優越感)を得ることも確かであり、だとすれば、経済格差が縮小し、より平等になった社会においては、以上のことから生まれる「幸福/ウェルビーイング」はかえって減退するのではないか」という疑問である。

これはある意味で人間や社会のありようについての本質的な論点であり、簡単には答えを出せない面を含んでいるとともに、さまざまな実証的研究を通じて掘り下げられるべきテーマでもあるが、ここまで本稿で論じてきた内容も踏まえ、さしあたり次のように答えることができるだろう。

すなわち第一に、格差が大きい社会においては、先ほどアメリカの平均寿命の短さについて見たように、競争圧力や不安から来るストレスがきわめて大きくなり、全体としては、上記のような優越感情がもたらす“プラス面”を上回るようなマイナスの作用が個人レベルでも生じるという点である。

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