藤井聡太叡王×山本一成が語る「AI時代の突破力」 「挑戦を楽しむ姿勢を大事にしたい」
ーーTeslaを超える企業をつくるというのは、かなり大きな目標ですよね。なぜその高い目標に挑戦するのでしょうか?
山本:世界を見渡せば自動運転、電気自動車開発の分野の事業を行う企業はいま続々と増えているのですが、日本国内に限っていうと、まだまだ少ない状況です。
ですから、誰か日本発の企業でこの分野に挑戦する人が出てこないかな……と思っていたのですが、誰もやらないなら自分でやろう、と。
将棋界のおかげもあって私自身がAIのプログラマーとして有名になりましたし、自分みたいな人間がチャレンジをしないのは世の中に対してアンフェアかなと思いました。
だからこそ、この領域で、自動運転のシステムをつくるだけじゃなくて、完全自動運転EVを量産するというところまでやってみようと。
ひと昔前までは不可能だと思われていたような話も、現代の技術を使えばたどりつけるはずですから。
目の前の対局、自分の成長を楽しむ
藤井:私は普段、目標をしっかり立ててそこに向かっていくというタイプではなくて。
将棋というのは不確実な要素が多いゲームなので、勝ち負けだったり、目標を達成できた・できないということだったり、そういうことに一喜一憂はしないようにしていますね。
少しずつ自分の上達を楽しんでいけるのがベストかなと思っています。
山本:藤井さんは、8個あるタイトル(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)のうち、7個を手にしたわけじゃないですか。あと1個、タイトルを取りたいと思うことはないんでしょうか?
藤井:取れるチャンスは限られていると思うので、できることなら取りたいですね。
一方で、そこに固執してしまうとその道が閉ざされたときに良くないのかなとも思っていて。目の前の対局、日々の自分の成長を大事にしたい気持ちが強いです。
山本:一つ一つの勝負を大切にやっていらっしゃるんですね。それが藤井さんの強さの秘訣でもあるんだなと思いました。
藤井:ありがとうございます。山本さんがTuringの事業で挑んでいるのは、すごく大きなチャレンジだなと思うんですけど、難題に向かっていくことをすごく楽しんでいますよね。
それにすごく刺激を受けましたし、自分自身も「挑戦を楽しむ」という姿勢は今後も大事にしていきたいなと思いました。
愛知県瀬戸市出身。 2016年に史上最年少(14歳2カ月)で四段昇段を果たし、無敗で公式戦最多連勝の新記録(29連勝)を樹立。 その後、五段を除く昇段、一般棋戦優勝、タイトル挑戦、獲得、二冠から七冠までのそれぞれの達成、名人獲得など多くの最年少記録を塗り替えてきた
1985年生まれ。愛知県出身。東京大学での留年をきっかけにプログラミングを勉強し始める。その 後10年間コンピュータ将棋プログラム『Ponanza』を開発、佐藤名人(当時)を倒す。東京大学大学院卒業後、HEROZ株式会社に入社、その後リードエンジニアとして上場まで助力。海外を含む多数の講演を実施。情熱大陸出演。現在、愛知学院大学特任教授も兼任
取材・文/栗原千明(編集部) 撮影/赤松洋太
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