認知症の兄と妹2人、仲良し3人に走った深い亀裂 「誰が面倒を見るか」に立ちはだかるお金の問題

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ある程度年を重ねてきたら、自分のこれからと、大切な人のこれからを考えながら、「どう過ごしたいか」という話をぜひしてみてください。

例えば「人生の最期は、リッチな施設で悠々自適に楽しみたい」と思うなら、「あとこれくらいはお金を貯めないと」と節約や働くモチベーションになるかもしれないですし、「死ぬまでにあそこに行ってみたい」「あの場所に住んでみたい」など、どこで過ごすかを考えるだけでも、人生の過ごし方が変わってくるのではないでしょうか。

親との関わり方も早い段階から話しておく

高齢化が進む今、自宅で介護を受ける人と介護者の双方が65歳以上の高齢者という老老介護が、年々増加傾向にあります。

厚生労働省の調査(国民生活基礎調査、2019年)によれば、同居する家族や親族が自宅で介護をする在宅介護のうち、老老介護の割合は59.7%と、調査を始めた2001年以降、最も多くなっています。

こうしたなかで、子ども世代から聞かれるのが、「老老介護をする親が困っていることを、どうやったら聞き出せるのか」という声。

往々にして親というものは、子どもに迷惑をかけたくないという心理が働き、困りごとがあってもぐっと胸に秘めてしまいがちです。また、子どもがよかれと思っていろいろと親に構うのを、親が嫌がる場合もあります。

子どもから見ると、老老介護をする親が大変そうであっても、親にしてみれば「老老介護ができている事実そのものが自信になっているのだから、邪魔しないでほしい」という場合もあります。

一口に老老介護といえども、そこに込められた思いはそれぞれで、子どもに積極的にサポートしてほしい老老介護もあれば、本当に困るぎりぎりのところまで放っておいてほしいケースもあるのです。

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一方、離れた場所に住んでいる子どもが、高齢の両親に対して「お互いを病院や施設に入れずに、家で見てあげて」と押し付けてしまうケースが時折見られます。

いくら夫婦といえど、年を重ねて自分にも身体の不調が出てくるなかで、夫や妻の介護を続けることは、ときとして難しい場面も出てきます。その負担を考えれば、家ではなく施設で過ごしたほうが、お互いにとっていい場合もあります。

ところが子どもは、「夫や妻が、家で介護をするほうが、病院や施設にいるより幸せに決まっている」などと、無意識のうちに押し付けたり決めつけたりしてしまうのです。

これらは、入院するとなかなか面会しづらいコロナ禍に入ってから、とくに見られるようになった傾向です。よかれと思って発言する子どもの気持ちが、親にとっては重い負担になってしまうことがあるのです。

こうしたことを踏まえて、なるべく早い段階から考えてほしいのが、年を重ねるにつれ、少しずついろいろなことができなくなってくる親との関わり方。いざ老老介護が迫ってから、親との関わり方を考えるのではなく、親が少しでも元気なうちから考えておくことをお勧めします。

中村 明澄 向日葵クリニック院長 在宅医療専門医 緩和医療専門医 家庭医療専門医

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なかむら あすみ / Asumi Nakamura

2000年、東京女子医科大学卒業。国立病院機構東京医療センター総合内科、筑波大学附属病院総合診療科を経て、2012年8月より千葉市の在宅医療を担う向日葵ホームクリニックを継承。2017年11月より千葉県八千代市に移転し「向日葵クリニック」として新規開業。訪問看護ステーション「向日葵ナースステーション」・緩和ケアの専門施設「メディカルホームKuKuRu」を併設。病院、特別支援学校、高齢者の福祉施設などで、ミュージカルの上演をしているNPO法人キャトル・リーフも理事長として運営。近著に『在宅医が伝えたい 「幸せな最期」を過ごすために大切な21のこと』(講談社+α新書)。

 

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