「定年後のキャリア」カギ握るのはゆるいつながり 「リスキング」よりもやりやすい種のまき方
この分類に沿って、よかったことと悪かったこと、残念だったことを書きだしてみるのです。言い換えると「人生の棚卸し」です。表を埋めようとすると、忘れていた些細な事も思い出されます。さらに、意外にも失敗や嫌な出来事がすでに転機になっていたり、「セカンドキャリアの種になりそう」と思えるかもしれません。
人生を棚卸ししてみた結果、例えば、営業成績でトップになった経験を思い出した。ならば、営業力に自信を持って、その能力の可能性を広げるため、「未定年」の今、人間関係を広げる意識を持って過ごす。職場以外のさまざまな人間関係を持つことは、特に定年後の人生で効いてきます。
「強い紐帯」より「弱い紐帯」が重要
その根拠になる理論は、アメリカの社会学者でマーク・グラノヴェッターによる「弱い紐帯(ちゅうたい)の強み」です。新しくて価値ある情報は、家族や親友、職場の仲間といったつながりが強い人々(強い紐帯)よりも、ちょっとした知り合い、つまりつながりが弱い人々(弱い紐帯)からもたらされる可能性が高いと論じています。
逆のような気もしますが、毎日顔を合わせる人とは、共通項が多く、同じ情報を共有しているため、新たな何かは得にくい。一方、めったに顔を合わせない、つながりの弱い人からは違う世界の新しい情報が入ってきやすい、ということです。
この「弱い紐帯の強み」理論を鑑みると、人間関係を多ジャンルに広げておくことも、立派な定年準備、「未定年ライフ」と言えます。新しい何かにチャレンジしようと、別の何かを学び直ししなきゃ、と自分にプレッシャーをかけることが、すべてではありません。
嫌な出来事がネクストキャリアの種になっていたのは、本書で紹介した、元NHKアナウンサーで現在は国立成育医療研究センター・もみじの家でハウスマネージャーを務める内多勝康さんです。内多さんはそのご経験を『53歳の新人~NHKアナウンサーだった僕の転職~』という著書で語られています。
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