谷口さんによると、尿酸の固まりやすさは体質の影響が大きく、人によってかなり違うとのこと。
尿酸値がそれほど高くなくても、尿酸が固まって痛風発作を起こる人もいれば、比較的高くても発作を起こさない人もいる。こうした個人差はあるものの、概して尿酸値が8.0mg/dL、9.0mg/dLと、尿酸が関節で固まりやすい状態ほど、また、高尿酸血症になった期間が長いほど尿酸が関節で固まりやすくなり、痛風が起こりやすい。
尿酸値が7.0を超えると……
さて、この高尿酸血症は尿酸値が7.0mg/dLを超える状態を指し、健診の血液検査で指摘されるケースが多い。これまでの調査では、30代の男性の3割以上が7.0mg/dLを超えていることがわかっている。
高尿酸血症そのものは無症状だが、近年、肥満やメタボリックシンドロームと深い関係があることが指摘されている。
高尿酸血症の人は、高血圧や糖尿病、脂質異常(中性脂肪やLDLコレステロール値が高い状態)があることも多く、尿酸は主に腎臓で排泄されるので、慢性腎臓病でも尿酸値は上がる。さらに、痛風があると心筋梗塞や慢性腎臓病、脳卒中になるリスクが高いといわれる。
「単に、尿酸値が高いだけだと症状がないため放置しがちです。しかし、尿酸値が7.0mg/dLを超えたら、メタボが始まっていないか注意するとともに、生活習慣を見直すきっかけにしてほしい」と谷口さんは言う。
では、尿酸値で病院を受診すべき基準はあるのだろうか。
欧米の調査では、尿酸値が9mg/dLの場合、向こう5年間で痛風を発症するのは15%程度だという。谷口さんは、日本でもこの状況はあまり変わらないだろうとみている。
「少なくとも、痛風が疑われるような、足の親指の付け根に痛みが起きた症状があれば、尿酸値の程度にかかわらず受診するのがよいと思います。しかし、そういう症状がなければ、私は基本的に生活習慣の見直しを行い、定期的に健康診断を受けていただく、というやり方をとっています」
尿酸値が9mg/dLを超えている場合でも、ほかに合併症がなければ、生活指導だけで様子をみることが多いそうだ。
「日本痛風・尿酸核酸学会の『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』では、9mg/dLを超えたら生活習慣の見直しとともに、薬物療法が推奨されていますが、基本は生活習慣の見直しにあり、ここをおろそかにしてはいけない」と谷口さんは言う。
一方、尿酸値の問題以外に、健診で腎機能障害や尿路結石、高血圧、糖尿病、心血管疾患などが指摘されたり、あるいは疑われるような状況にある場合には、医療機関への受診が勧められる。尿酸値を下げる薬物治療が必要になる場合もあるからだ。合併症の治療薬によっては尿酸値を下げる作用を持つものもあるので、それが使われる場合もある。
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