目的の①はわかります。読書離れが叫ばれて久しい現在、読書感想文の宿題でもないと夏休み1冊も本を読まなかった、という学生さんも多いことでしょう。
しかし問題は②です。読書と作文は「豊かな人間性」を育むためにある。この思想はいったいどこから来たのでしょうか。私の知る限り、読書が「豊かな人間性」を育むのだとすれば、読書好きは全員「豊かな人間性」をもれなく携えていることになりますが、現実は……。書評家である自分の首も絞めそうなので、このあたりにしておきましょう。
そう、読書とは本来、本というメディアを通して、そこにつづられている知識や物語といった情報を得る行為。しかし読書感想文コンクールは頑なに「読書に伴う感動は(単に情報を得るだけでなく)豊かな人間性を育むためにある」という思想を抱き続けています。
読書は「価値観」を身につけるためのものという思想
実は、この「読書は豊かな人間性を育むためのもの」という思想は、文部科学省の読書教育方針にも合致しているところです。
たとえば文部科学省のWEBサイトを見てみましょう。ここで掲載された「国語力を身に付けるための読書活動の在り方」もまた、この「読書=豊かな人間性を育むためのもの」という思想をあらわにしているのです。
そう、読書は「教養、価値観、感性」を身につけるためのもの。教養=知識と感性=感受性はともかくとして、問題は「価値観」です。
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