「現代の若い人たちは、育休を応援している企業かどうか、すごくよく見ていると思うんです。育休に消極的な企業は見抜かれて、優秀な人材が入らなくなってしまう。それに、育休後の社員に対して企業が『抜けたぶんを取り戻す成果を出せよ』とプレッシャーをかけるのもちがう。戻ってきて、頑張って働きたいと思える組織や関係性をつくっていくほうが本質だと思うんです。実際に僕は、会社に育休を応援してもらえたことに本当に感謝しているから、復帰した今はそれまで以上に頑張って働いていますよ(笑)」
吉田さんにとって、家族にとって、そして組織にとって、育休は新たな変化を迎え入れるきっかけになった。とはいえ、育休が理想郷のようなものだったわけではなく、思わぬ落とし穴もあった。その1つが、「育休復帰ブルー」だ。
「育休が豊かな時間すぎて、後半は憂うつになりました(笑)。2022年の11月に職場復帰することになっていたんですけど、仕事に戻れるのが楽しみな反面、『家族と過ごすこの豊かな時間が、終わってしまうのか……』と、寂しくなってしまったんです」
実際に職場に戻ってみると、会社への感謝もあってそれまで以上に仕事へのモチベーションは高まったというが、もしかすると「家族と過ごす時間が多い生活のほうが合っている」と気づき、育休後に働き方を変える人もいるかもしれない。それがネガティブなことではもちろんないが、育休はキャリアの転機になりえそうだ。
家庭に「育休復帰ショック」が起こることも
落とし穴はもう1つ。育休後にパートナーに負担が集中することだ。
「育休が終わったあとが大変でした。それまで2人で行っていた家事・育児が、1人に集中してしまう。もちろん、僕もできることはしますけど、それでも奥さんはその現実にぶつかってしまって、復帰後1週間は泣いてました……」
育休というと「会社からメンバーが抜けてしまう」ことに焦点が当てられがちだが、「家庭からメンバーが抜けてしまう」場合、家族へのショックも大きいのだ。
会社であれば、たくさんいるメンバーの中から複数人でその業務をふりわければいいが、家庭ではそうはいかない。家庭に「育休復帰ショック」を起こさないためにも、育休を終える前にその後の役割分担について話し合うなど、「育休の終え方」には工夫が必要そうだ。
誰もが吉田さんのように育休を取れるわけではないだろう。実際に、育休を取得した吉田さんの友人は、「職場に戻ったときに仕事があるかわからない。たぶん片道切符だ」と漏らしていたという。
まだまだ男性が育休を取りづらい雰囲気があるからこそ、個人や家族だけではなく組織にとっても、育休を後押しすることがポジティブな変化のきっかけになるものとして捉えなおされる動きが広まってほしい。その先に、望んだ人すべてが育休というキャリアブレイクを経験できる社会があるはずだ。
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