成毛眞、超難解な「超ひも理論」を習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授に聞く<1>
なるほど。と話を聞きながら思うのは、橋本先生の顔も素粒子の塊なんだよなあということである。もちろん、橋本先生の顔がはらはらと崩れ落ち粒子に戻っていくわけがないことは理解しているが、理解しているのと、“素粒子でできている”という言葉から得られるイメージは異なる。
ボクも正直なことを言うと、すべての物は原子の塊であると知ったそのときから、どうしてそれがバラバラにならないんだろうという根本的な疑問は持っている。人間も素粒子の塊、超ひも理論によると素粒子はひもだから、人間はひもの塊。いくら理論的にはそれが成り立つと理解しても、感覚的には解せない。
仲野:そうそう。原子核のまわりを電子がまわってるのが原子で、その原子が集まって人間と言われても、そんなスカスカな物が集まってどうしてこういう物ができるのかなというのはありますね。だいたい、僕ら一般人が理解してあげてもいいギリギリのところは、「光は粒子でもあり波動でもある」までです。
仲野先生、一般人じゃないでしょ。仲野先生は光は粒でもあり波動でもあるから稼働している実験装置をバリバリ使っている人である。
生物の状態は「現象として決まっている」
仲野:それはただ、つこてるだけ。原理知りません。
ああ、聞きたくなかったそのセリフ。でもまあ、確かにユーザーはその原理を知る必要はない。
仲野:まぁ、素粒子は物でなくて状態だというでしょう。さっき言ったように、「光は粒でも波動でもある」は、「しゃあない負けといたる」と思っても、「状態って何なんですか。状態が集まってなんで物になるの?」ということが、素粒子の本には書いてないんです。こういったことを、超ひも理論の本を読んでいる人たちはどれだけ理解しているのか。本はたくさん売れているけど、みんなが理解しているとはとても思えないんですよ。なんぼ読んでもわからないから次の本も読みたくなるのと違いますかねぇ。
橋本:仲野先生の『エピジェネティクス』も難しかったです。難しいので、「ここは飛ばして読んでいい」と書いてあると安心できました。あと、「生物ってなんでこうなっているのか」は、説明されているようでされていないように感じました。
仲野:あ、それは説明してないんですわ。なんでこうなっているかは現象として決まってるんですから。
橋本:そうですよね。でも、DNAの中に情報が入っているなんて、誰かがその仕組みを作ったみたいに見えますよね。素粒子もそうなんですけど、それに対してどう思って研究しておられるのか。
仲野:生物は進化の結果、あのように“できている”。それ以上でも以下でもないですから。
橋本:その事実をまずは認めるということですか。
はっ。なんだか裁判所のような様相を呈してきた。
仲野:そうです。そのできている物がどう成り立っているかを調べるのが生物学です。
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