歌舞伎を見ないビジネスマンが損すること 元外資系の英国人と日本人、日本文化を語る

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写真左から、デービッド・アトキンソン氏、成毛眞氏。司会進行は、元NHKエグゼクティブアナウンサーの葛西聖司氏(撮影:今井康一)
イギリス人の元銀行マンがなぜ日本の国宝を守り、外資系企業元社長がなぜ歌舞伎見物を勧めるのか――。その疑問を皮切りに、2月24日、東京の日経大手町セミナールームで、“ビジネスマンへの「日本文化入門」”と題したトークイベントが開催された。
ビジネスマンへの歌舞伎案内』(NHK出版)の著者、元マイクロソフト社長で書評サイトHONZ代表の成毛眞氏と、『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』(講談社+α新書)の著者、元ゴールドマン・サックス金融調査室長で小西美術工藝社社長のデービット・アトキンソン氏によるものだ。進行は、元NHKエグゼクティブアナウンサーで古典芸能に詳しい葛西聖司氏が務めた。ここではそのエッセンスを再録する。

日本文化が好きだったわけではない

David Atkinson●1965年生まれ。オックスフォード大学で日本学を専攻。アンダーセン・コンサルティング、ソロモン・ブラザーズを経て、92年ゴールドマン・サックス入社。2006年にパートナーとなり、07年退社。09年小西美術工芸社に入社、10年に会長、11年から社長兼務。裏千家茶名「宗真」を持つ。(撮影:今井康一)

葛西:アトキンソンさんはイギリスのご出身で、大学では「日本学」を専攻されました。もともと日本文化がお好きだったのですか?

アトキンソン:いえ、違います。私は軍人の家系に生まれたのですが、軍人にはなりたくなく、だから大学進学を決めました。ただ、父が「大学へ行くならオックスフォードかケンブリッジでなければならない」というので、そのどちらかしか選択肢がありませんでした。

私が大学に入った1983年は、イギリス経済がボロボロだった年です。オックスフォード大学でも、卒業生の就職内定率は70%程度でした。そこで、2つの視点で、何を専攻するかを決めました。

まず、世界各国の経済成長率の高い国と、そこの言葉を勉強している学生の数を調べ、それから受験競争率の低い学科を調べました。成長率が高い国について学ぶ、競争率の低い学科に入れば、入学も就職も容易だろうと考えたのです。その答えが、日本でした。だから特に日本文化に興味を持っていたわけではないのです。ただ、読みはあたり、就職には苦労しませんでした。

成毛:ローリスク・ハイリターンを狙ったわけですね。私は米国系のマイクロソフトに20年近く勤めました。私と同い年の創業者であるビル・ゲイツが25歳の時に立ち上げた会社です。Windows95とWindows98というビッグイベントを経験したため、2000年頃にはまさに「飽き」ました。そこで「新しいことをやってみたい」と投資会社をつくりました。ミドリムシで有名になったユーグレナの法人筆頭株主です。ただ、私自身はその会社の経営にも「飽き」たため、今は直接かかわってはいなくて、主に「HONZ」というノンフィクションの書評サイトの運営をしています。

葛西:そして、アトキンソンさんは現在は、小西美術工藝社という、国宝の修復を手がける企業を経営されています。引き受けられたきっかけは何だったのでしょうか。

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