歌舞伎を見ないビジネスマンが損すること 元外資系の英国人と日本人、日本文化を語る
葛西:そしてアトキンソンさんは、裏千家の茶名「宗真」を許されています。お茶はどういったきっかけで始められたのですか。
アトキンソン:海外で日本を学び、日本に来る外国人は2種類います。日本へ来たらまっすぐ京都へ行く人と、トヨタへ行く人です(笑)。つまり、文化を学んできた人と、経済を学んできた人。文化を学んできた人が日本へ来ると、「なぜ着物を着ていないんだ」「なぜちょんまげじゃないんだ」と憤って、すぐに帰国してしまう。でも私はトヨタへ行くタイプだったので、日本へ来てがっかりすることも、何かに夢中になることもありませんでした。
お茶を始めたのは、銀行のトップと会う仕事ばかりしているのが、嫌になったからです。土曜の朝の2時間だけでも、そういったものと切り離された時間がほしいと思いました。寝て過ごしていてもよかったと思いますが、新しい世界も見てみたかったのです。
時計のない茶室では、誰も経済の話はしません。メールもファクスも秘書も入ってきません。それがよかった。そして衝撃的な言葉を耳にしたのも、茶室でした。「ごきげんよう」。知ってはいましたが、誰が使うのかと思っていた言葉でした。
また、お茶の先生とどこかへ出掛けて、「殿方」という言葉を使っているのを聞いたときにも驚きました。「殿方」は、料亭のトイレに表示する言葉だと思っていたからです(笑)。
日本にはいくつもの文化が同居している
葛西:成毛さんはお茶についてはいかがですか。
成毛:私はお茶はやらないですね。お茶はお茶でも、お茶屋遊びの方が好きです(笑)。それから、歌舞伎でも世話物と呼ばれる江戸時代の現代劇が好きなので、私の好みは、伝統芸能というひとことでくくられるもののなかでも、大衆文化なのだと思います。
アトキンソン:そうやって、いくつもの文化が同居しているのが日本の特徴だと思います。日本の特徴は、どんな文化も柔軟に取り入れることではなく、取り入れても、前にあったものも残し、そこにプラスしていくことです。イギリスでは、新しい文化を取り入れたら、それに取って代わられたものはすぐに廃れてしまいます。
※後編は3月9日(月)に掲載します。
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