成毛眞、超難解な「超ひも理論」を習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授に聞く<1>

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橋本:最終的には“かかる”と思っていますが、まだ、かかりません。実験で理論の正しさが証明されることには憧れを感じます。ヒッグス粒子なんてそうですよね。こうではないかと論文を書いたら、それを実験で証明してくれるまたは否定してくれる人がいる。ただ、実験結果が出たときには、理論物理学者として生きるか死ぬかがはっきりします。

仲野:死ぬ人おるんですか。

橋本:ヒッグス粒子が実際に見つかったとき、ヒッグス粒子の質量はこれくらいですと言っていた何万という理論が一気に死にました。「あそこにある」「こんなふうだ」と言っていたのが、間違いやとわかったので。それで偉い先生も若い人も、また同じスタートラインに立てるのは面白いと思います。

これはちょっと興味深い。仮説の証明に時間がかかるので、物理学者としての人生をその証明を待たずに終える人もいるだろうし、間に合ったとしても悲喜はまさにこもごもである。

仲野:死んだ理論を唱えていた物理学者は職を失ったりせえへんのですか。

橋本:職は失わないでしょうが、権威を失う可能性は大いにありますね。我々の世界で言うところのナチュラルネス、確からしさが変わってしまうとそうなります。

超ひも理論の「超」がみつかるはずが…

「職は失わないが権威を失う」発言がツボに入った仲野教授

で、超ひも理論である。

橋本:超ひも理論の超は、超対称性という自然界にあると仮定される“美しいもの”で、それはCERNのLHCを使った実験で証明できると期待されていました。

仲野:CERN。成毛さんが行ったとこですね。

そうなのである。2014年3月、ボクはCERNつまり欧州原子核研究機構を見学した。その様子はこちらでご覧いただきたい。

仲野:僕も行きたかったんですけど、さすがに年度末でしたから……。でも橋本先生、「期待されていた」ということは、証明できなかったんですか。

橋本:そうです。ヒッグス粒子が見つかったとき、その超対称性も見つかると思われていたのですが、見つかりませんでした。

仲野:ということは、その論は全部死んだ。

橋本:そうです。超対称性こそ世界なりと唱えていた人たちは今、しょぼんとしています。ただ、LHCがさらにエネルギーを上げて、間もなく動き出すので、その結果をみんなカタズを飲んで見守っているところです。さらに多くが生きるか死ぬか……。

仲野:ずっと実験結果が出なかったら、みんな生きていけますね。

橋本:数学者もそうですね。実験で証明する必要がない「正しい」ことをやっているので。実は2014年、超ひも理論界は大きく盛り上がりました。宇宙の輻射(ふくしゃ:放射)を測定できて、それをそのまま解釈すると超ひも理論が証明できるエネルギーに到達しているかも、と大フィーバーになったのです。

ところがその実験は解析が失敗していて、やはり超ひも理論は証明できませんでした。みんな落胆しましたが、でも、超ひも理論は絶対に証明できないものではないというコンセンサスが得られました。

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