成毛眞、超難解な「超ひも理論」を習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授に聞く<1>
「超ひも理論の本が売れるのも、みんな、何冊読んでもわからないからまた次を読みたなるんでしょう。まったく、世界に超ひも理論を理解してる人がどれだけいるんですかね」
このときまだボクは、仲野先生が超ひも理論をどの程度理解しているのかを知らない。
あ、ここだここだ。素粒子論研究室・橋本幸士。コンコン(ノックの音)。
理論物理学者、橋本幸士先生登場
「あ、どうもはじめまして」
若々しいスマートな男性が顔を出した。橋本先生本人である。事前に、YouTubeの理研チャンネルでご尊顔を拝していなかったなら、絶対に学生と間違えたと思う。それでは失礼して中に入らせていただきます。
目に飛び込んで来たのは、壁一面が黒板。ホワイトボードでなくて黒板というところが、実にいい。そこに数式がびっしり書かれている様は、いかにも理論物理学者の部屋である。気になるお値段はノートPC2台ぶんくらいだそうだ。紙に書くのは最終段階。アイデア出しは黒板で、歩き回りつつやるのが橋本流である。
「あれは円すいですね」
黒板に描かれた図形をゆび指し、見れば誰もがわかることを口にするのは仲野先生。躊躇せずにこう続ける。
「それくらいしかわかりません」
あれ、仲野先生、そうなんですか。これじゃ、何のために同行願ったのかわからない。
「わかられたら、ぼくら商売あがったりです」
橋本先生のフォローは暖かく優しい。以下、会話をお楽しみください。
仲野:思うに、物理学者は生物学者を見下してますよね、きっと。いちばん偉いのが数学、次が物理、次が化学で、その下が生物ですからね。(これは仲野先生個人の見解です)
橋本:いやいや。
仲野:同じ物理でも、橋本先生みたいな理論物理の人は実験物理をバカにしているでしょう。
橋本:してないですよ。むしろ、実験できることがうらやましいです。なぜなら超ひも理論はなかなか実験にかからないからです。
説明しよう。“実験にかからない”とは、その正誤を実験で証明できないという意味だ。実験はまだ素粒子レベルであり、素粒子の中身となると理論に追いついていないのである。19世紀の物理は実験結果に理論を当てはめてきたが、今やすっかり逆転している。
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