アップル「Vision Pro」が日本の建設業界を救う日 開発者が考える「ゴーグル型デバイス」の未来

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Vision Proはこれまでのヘッドセットと異なり、室内を難なく行動できることから、自宅やオフィスで掛けっぱなしで仕事をする人が出てくる可能性が高い。そうなると、これまで人々がAR/VRのアプリに触れる時間が、比べ物にならないほどに増大することが考えられる。

スマートフォンがあらゆる人のポケットに入り、アプリを使う可能性がある時間、すなわちスマホの画面を見ている時間がデスクトップPCより長くなった。また2020年からのパンデミック下においては実空間にある店舗よりも接触時間が長くなったことで、スマートフォンのアプリ経済圏が現在も成長を続けている。

デバイスの価格低下がどこまで進展するか次第ではあるが、たとえば10年程度でVision Proやこれに類するデバイスが普及することで、パソコンとスマートフォンの役割を併せ持つような空間コンピュータの経済圏が成立していくことになるだろう。

建設現場の課題が直接解決される?

一方、建設の課題解決に対して期待を寄せ、アプリ開発を進めている企業もある。

nat株式会社の代表取締役社長、ブルース・リュウ(劉栄駿)氏は、Vision Proのデモ映像を見て、「時間と空間の境目がなくなる」という感想を述べた。

「今までアップルは平面スクリーン領域でAR/VRに注力してきたが、平面では立体的な情報を扱うことができません。Vision Proは立体的な情報を、空間でリアルに、自然かつ高画質に表現できる、本格的なハードウェアとして、ようやく登場してきました」

そのうえでリュウ氏は、Vision Proが未来の建設・建築業界における「現場の仕事とコミュニケーションの仕方を一変させる」と予測した。

これまでnatは、iPhone/iPadに搭載されているカメラと、精密な距離計測が行えるLiDARスキャナを活用し、空間でビデオを撮るだけで3D測定と間取り図生成が行えるアプリ「Scanat(スキャナット)」を開発しており、大手建設会社から中小のリフォーム業者まで導入が進んでいる。

Scanatでの現地調査風景。iPad Proで室内をビデオを撮影する要領で、ミリ単位の精度の現調が行える(筆者撮影)

これまで、現況計測は2〜3人の正確な計測に長けた人材によって行われ、膨大な時間がかかっていた。Scanatは現在、iPhoneもしくはiPadのProシリーズ(LiDARスキャナ内蔵モデル)でビデオを撮るだけで、ミリ単位の精度による計測を誰でも1人で行え、平面図を起こすこともできる。

「建設業界の2024年問題」と言われる労働時間削減と、深刻な人材不足の双方にインパクトを与えているこのアプリが、Vision Proによって、どのように変化するのか。リュウ氏は、Scanatが行っている「現地調査」(現調)の効率化以上のことが可能になると考えている。

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