ビッグモーター、「PR会社頼み」会見の残念な帰結 巧みな危機管理を、社長のお粗末対応が台無しに

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もし会見を開かずに国交省聴取の日を迎えたら、どうなっていただろうか。保険金不正請求発覚後、初となる幹部の登場に多くのメディアが押し寄せるのは確実だ。テレビに映る「幹部が役所に呼びつけられる姿」は否が応でも、見る者に「法を犯した存在」という印象を与えるだろう。

だが社長会見の翌日ではどうか。今さら、国交省に幹部が登場しても、インパクトはかなり弱くなっている。会見なしで聴取に応じた場合と比べ、報道量もかなり減るはずだ。「役所に呼びつけられる姿」のメディア露出が減ることで、「法を犯した存在」という印象をわずかながらでも軽減できたのではないだろうか。

さまざまな「巧みさ」を吹き飛ばした「ドタバタさ」

さて、ここまでは会見の巧みさを見てきた。では、会見全体が巧みなものであったかというと、決してそうではない。むしろ「ドタバタさ」や「お粗末さ」のほうが、強く印象に残るものであった。

「ドタバタさ」で言えば、最たるものは前述の「記者クラブ加盟社限定」の参加資格だ。「記者クラブ加盟社以外、参加不可」という案内状を、記者クラブ加盟社「以外」にもわざわざ一律で送付していたからだ。しかも会見場では「記者クラブ加盟社以外は参加不可」を徹底するわけでもなく、会場を訪れた加盟社以外の記者を会場に入れている。

もし本気で記者クラブ加盟社に限るなら、どうすべきだったか。当然、記者クラブにだけ案内文を告知すればいいだけだ。

記者クラブにプレスリリースなどを送る際は、「最低48時間前に事務担当に送付」などといった、その記者クラブの「独自ルール」を守らなくてはならない。私自身、総理官邸、自民党、財務省、経産省の記者クラブに所属していたが、ルールは記者クラブごとに微妙に異なっている。いずれにしても、今回の記者会見では記者クラブから課される「公開までの時間的猶予」をつくれなかったのだろう。

そして「ドタバタさ」を感じさせたもうひとつが、会見に列席したビッグモーター幹部の服装だ。「謝罪会見」にふさわしく、兼重宏行社長を含む全員が紺のスーツとネクタイ、そして白の「レギュラー」カラーのシャツに身を包んでいた。だが、新たに社長に就任する和泉伸二専務取締役だけは、色は白ながら、どこかカジュアルな印象の「ワイド」カラーを着ていた。

ビッグモーター会見の写真
新たに社長に就任する和泉伸二専務取締役(撮影:今井康一)
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