まず、参加できる記者を限定していることである。案内文には以下の記述がある。
企業にとって「危険な会見」で記者を限定するのは、危機管理広報の常套手段だ。「注目の記者会見」には、実にさまざまな「メディア」が顔を出す。一般的なテレビや新聞、雑誌に加え、『週刊文春』のような「喧嘩上等」の週刊誌、「赤旗」のような政党の機関紙、さらに誰も聞いたことのない怪しげなメディアの「記者」も現れる。
だが「記者会見」という以上、自称「記者」の参加を企業は基本的に拒むことができない。一旦会場に入ってしまえば、雑多な「記者」からどんな質問を浴びせられるか、わからないのだ。だが「記者クラブ加盟社」に絞ることができれば、「最低限の防御」ができる。
今回のように、記者を限定する「理由付け」として「セキュリティおよび会場のスペースの都合」を挙げるのも定番の手法と言える。
案内状には参加資格について、もうひとつ「巧みな」記述がある。
「1社で3名も参加できれば十分ではないか」と思われるかもしれない。だが、テレビや新聞などの大手メディアにとって、「3」という参加記者数は実は「ギリギリ」なのだ。
犯罪や事件・事故を取材する社会部、企業取材を専門とする経済部、そして国土交通省の担当記者も出席したい。関連部門が各1名ずつで、ちょうど「3」となる計算だ。「3」を割れば、参加できない大手メディアの記者から苦情が出る。かといって、主催者としては余計な質問が出るのを避けるため、極力、記者を増やしたくはない。そのバランスをとった「3」という人数は、「絶妙な線」を突いているのだ。
巧みな点はこれだけではない。記者会見の開始時間にも意図が見えた。会見は「11時開始、12時半終了」で設定されていた。この開催時間は「メディアでの取り扱いをできるだけ抑える」ことが目的だろう。
テレビなら14時や15時台の会見であれば昼の情報番組を、17時や18時台であれば夕方ニュースと時間が一致する。各局は当然、放送時間中に行われる「注目の記者会見」を生中継することになるはずだ。逆に言えば、この時間帯さえ避ければ、生中継されることはないということになる。
新聞の扱いを減らすにも、11時という開始時間はちょうど良い。11時であれば、夕刊に十分、間に合うからだ。翌日の朝刊は、自ずと前日の夕刊との重複を避けた解説記事が中心となる。夕刊よりも読まれる朝刊での扱いの最小化を狙ったのだろう。
「聴取前日の会見」という巧みさ
さて最後の巧みさは、会見を25日に設定したことだ。この翌日の26日には、国土交通省による幹部への聴取への聴取が予定されていた。
私自身は会見を7月28日の金曜と予想していた。水曜の国交省側の温度感を見極めたうえで、会見を開くものと思っていたからだ。だが、実際には聴取前日の会見となった。結論としてはビッグモーター、そして「危機管理専門のPR会社」が選択した日のほうが正しかったように思える。
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