変形性膝関節症の中期――ひざ関節の内側か外側の軟骨がすべてなくなり、骨どうしが当たった状態――になると、整形外科の教科書には手術しかないとあります。僕も20年ほど前には、中期の患者さんには痛み止めが効かなければ「もう手術しかありません」と答えていました。
しかし、中期以降の患者さんでも、痛みなく歩けるようになることを知った今では、この段階ではまだ手術の話はしません。本当のところは、中期以降に痛み止めを常用することで、ひざの状態を悪化させているのだとわかったからです。
痛みだけ止めて、これまでと同じ活動していると、軟骨の修復メカニズムは追いつかず、末期にまで進んでしまう。ここでの痛み止めの使用はひどいときだけに留めて、軟骨再生の体操を行い、治癒していく間、軟骨を守ることができれば、手術を避けて痛みなく歩けるようになります。
この中期が、ひざの運命の分かれ道というわけですね。
「骨欠損」まで進んでしまうと末期状態
変形性膝関節症の末期になると、レントゲン写真では、脛骨がすり減って大腿骨がめり込んでいるのがわかります。「骨欠損」と呼ばれる状態です。
ここまで変形が進むと、ひざの中にある4つの靭帯のバランスも悪くなるため、歩行が不安定になります。
軟骨には知覚神経がないので、完全になくなるのは簡単なことですが、普通は骨が欠損する状況までにはいたりません。それは骨の膜には知覚神経が分布し、守っているからです。
骨が欠損するくらいの衝撃は、本当は痛くて痛くて、一歩も歩けないほど。しかし、優秀な痛み止めを常用してしまっていると、痛みが発生しないために、こんな骨欠損の状態まで進行してしまうのです。
また中期以降は内側の軟骨がなくなり、ひざの位置はからだの外側へと移動してしまうため、体重はひざの関節からかなり離れた内側にかかることになります。それを支えようとして、大腿骨はねじれ、脛骨と腓骨は倒れてますますO脚に。歩くときに毎度体重の5倍の力が内側にかかることで、この病気の原因となった内側の大腿骨と脛骨は加速度を増して傷んでいきます。
末期になってしまうと、手術などで治せても、術後の経過がかんばしくないこともあります。それは相当に進んだ骨欠損のためです。
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