その結果、むしろそうした問いの多さこそが、いまの時代がはらむ深刻な問題を浮き彫りにしているのではないかと思うようになりました。つまり、
「自分が何をしたいのかがわからない」
「自分が何をするべきなのかを、誰かに教えてもらいたい」
「自分が何を好きなのかがわからない」
「自分が何を好きであるべきなのかを、誰かに教えてもらいたい」
という姿勢が、世の中に広く蔓延していることの表れなのではないかと思い至ったのです。
「本を読まないのはあまりにもったいない」
こうした問いに対する答えの一つとして、このたび『人生を変える読書』を上梓しました。
本書は、2021年4月に出版した『読書大全』の前書きの部分、すなわち、私の読書体験をベースに読書の持っている本当の意味を、さらにわかりやすく、できるだけ多くの方々にお伝えするために書き起こしたものです。
ですから、本書は速読術とか多読法とか、本にまつわるテクニックについて書いたものではありません。そうした読書に関する方法論についてはさまざまな関連本が出ていますので、そちらを参考にしていただければと思います。
本書を通して私が言いたかったことは、「本を読まない人生というのはあまりにももったいない」ということです。
私の知人にも本を読まないという人はいますが、積極的な理由で本を読まないという人はいないようです。本以外のことに時間を費やしたほうが楽しいという人もいる一方で、学校の勉強を通して本が嫌いになったという人もいます。
実は私も「順位をつけるため」の勉強が嫌いで、そういうものに対しては子供の頃からすごく反発心がありました。「学ぶ」ということはこんなに楽しいのに、「勉強」というのはなぜこんなにつまらないのだろうかと。
ですから、例えば私は大学受験の社会の選択科目として日本史を取っていたのですが、当時の大学入試には明治維新以降の日本の近代史は出ないのがわかっていながら、好きな近代史ばかり勉強していました。
つまらない受験勉強の息抜きに、日本の近代史を勉強していたという感じでしょうか。学問という観点からは、何かとてもおかしな話ではありますが。
いずれにしても、そのような経緯で、私自身は勉強は好きではなかったのですが、読書は嫌いにはなりませんでした。
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