医師が警鐘「RSウイルス」真夏に流行の異常事態 ワクチン実現は間近だが、新生児は打てない?
しかも、肺炎にかからなければ済むものでもない。
『ランセット』誌によれば、1歳までにRSウイルスに感染した子どもは、感染しなかった子どもに比べ、5歳までに喘息を発症するリスクが26%も上がってしまう(前者は21%、後者は16%)。
肺や免疫系がまだ発達途上の段階でRSウイルスに感染したせいだろう。この結果は、子どもたちの性別、人種、民族、乳児期に保育園に通っていたかどうか、母親が喘息であったかどうかとは無関係だった。
ワクチン実現は2年後?
だからこそ、感染予防に尽きる。
RSウイルスワクチンは長年にわたる研究にもかかわらず、なかなか成功しなかった。それがここ数年、急ピッチで開発が進み、ファイザー、グラクソスミスクライン(GSK)、モデルナ、サノフィなど、世界の主要ワクチンメーカーが開発に成功。すでに複数のワクチンがアメリカの食品医薬品局(FDA)から製造承認を得ている。
ワクチンで乳幼児期のRSV感染を減らすことができれば、5歳までの喘息患者の約15%が予防できると推定される。
日本でも、ファイザーとGSKが製造承認を申請中だ。
ただし、まだ安心できない理由が2つある。1つは、新型コロナのような緊急事態とは違い、半年やそこらで承認に至るとは思えないことだ。
データによほどの不備がなければ、2年以内には承認されるだろう。だが、冬のウイルスが夏に流行している異常事態の今、その2年が長く感じられるのが現場の実感だ。
なお、乳幼児のみならず高齢者も、RSウイルスによる間質性肺炎リスクは高い。
アメリカでの研究では、RSウイルス肺炎による高齢者の死亡率や入院期間は、インフルエンザによる肺炎と同等であることがわかっている。高齢者ではインフルエンザによる肺炎を防ぐためにワクチン接種が推奨されているのだから、RSウイルス感染症も同じくワクチンによって肺炎を阻止すべきだ。
将来、日本で承認されたら、インフルエンザワクチンと同様、65歳以上の高齢者に接種が推奨され、一部公費負担で実施されることになるだろう。
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