医師が警鐘「RSウイルス」真夏に流行の異常事態 ワクチン実現は間近だが、新生児は打てない?

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しかも今、医療現場はこのシナジスについてちょっとした混乱に陥っている。コロナでRSウイルスの流行が消えたかと思ったら、昨年は夏に流行、今年も同じ状況だからだ。シーズン前から毎月注射するものなので、コロナ前は10月ごろから接種を開始すればよかった。ところが2シーズン続けて夏に流行し始め、今やいつシナジスを打つべきか、正解がわからなくなっている。

実現したら妊婦さんにもワクチン助成を

重症化リスクの高い、生まれて間もない赤ちゃんをRSウイルスから守るには、母体からの移行免疫を強化しておくことだ。

一般に赤ちゃんはお腹の中にいるうちに、お母さんから抗体などを胎盤を通して分けてもらうことができる。それが移行免疫だ。生まれてからも4〜6カ月間は、お母さんの免疫によってさまざまな感染症から守られ続ける。それも半年程度で次第に失われていくが、そのときまでに繰り返し接種して、自前で免疫を作らせようというワクチン接種もある。まず生後2カ月目のロタウイルス、ヒブ、小児用肺炎球菌、B型肝炎ワクチン、その次に3カ月目から破傷風などを含む4種混合ワクチン、といったところだ。

インフルエンザや新型コロナウイルスに対するワクチンは、妊娠中のお母さんへの接種が推奨されている。妊娠後期にかかると重症化しやすいので母体を守る目的もあるが、生まれてきた赤ちゃんもしばらくの間、移行免疫によって感染症から守られることがわかっている。

さらに母乳中にも抗体が含まれる。お母さんの免疫は、生まれた後も赤ちゃんを感染症から守っているのだ。

だったらRSウイルスについても、お母さんにワクチンを接種して赤ちゃんを守れないものか?

実はファイザーのRSウイルスワクチンは、お母さんへの接種によって乳児のRSウイルス感染症を予防する効果が示されている。ほかのワクチンメーカーもやがて臨床試験を行い、同様の効果を実証するだろう。

RSウイルスワクチンが実用化されたらインフルエンザ等と同様に妊婦さんの接種が推奨されることだろう。自治体による助成等が速やかに導入されるよう求めたい。

久住 英二 立川パークスクリニック院長

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科専門医、血液専門医であり、旅行医学やワクチンに関する造詣が深い。国家公務員共済組合連合会虎の門病院で内科研修ののち、臍帯血移植など血液がんの治療に従事。血液内科医としての経験から感染症やワクチンにも詳しく、常に最新情報を集め、海外での感染症にも詳しい。2024年12月に立川高島屋SC10階に内科、小児科、皮膚科の複合クリニック「立川パークスクリニック」を開業した。

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