風呂や土いじりで感染、急増する「肺NTM症」の正体 注意したい人や症状、治療などを専門家が解説
「肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)」という病気をご存じだろうか。
抗酸菌という結核と同じタイプの細菌が原因で起こる呼吸器の感染症だ。ヒトからヒトにうつらない点では結核と異なるが、土の中や水回りなどに生息する菌を吸い込むことで感染する。
これまでは肺の病気を患っている人がかかりやすいと考えられていたが、近年は、“健康なやせ型の中高年女性”に急増しているという。これはどういうことだろうか。
肺非結核性抗酸菌は、“結核菌”と“らい菌”を除いた抗酸菌の総称。抗酸菌の種類は200以上あるが、日本人で起こっている感染のうち、9割を占めるのが「MAC(マック)菌」と呼ばれる菌だ。近年急増しているのも、このMAC菌によるものが多い。
MAC菌は風呂場や水道、貯水槽などの給水システム、畑や庭の土など、あらゆる場所に存在していて、それを含んだエアロゾルやほこりを吸い込むことで感染する。その点では、ヒトからヒトへ感染するコロナや麻疹とは異なる。
感染すると、初めのうちは無症状だが、次第に咳、痰、血痰、発熱、倦怠感、体重減少、息切れなど、結核と似た症状が表れる。重症化すると、喀血(かっけつ)や、呼吸不全による呼吸困難に陥り、命にかかわることもあるという。
罹患率は7年間で2.6倍にも
実は今、日本で肺非結核性抗酸菌症の患者が急増しており、世界で最も罹患率が高い国といわれている。
罹患者は2007~2014年の7年間で約2.6倍に増えており、罹患率は10万人当たり14.7人に達した。ほかの国を見てもここまで増えている例はなく、アメリカでは10万人あたり5.5人、ドイツでは2.6人と、日本の罹患率の高さが際立つ。
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