風呂や土いじりで感染、急増する「肺NTM症」の正体 注意したい人や症状、治療などを専門家が解説
この病気に詳しい複十字病院(東京都清瀬市)呼吸器センター医長の森本耕三医師によると、2017年には人口10万人あたり19.2人にまで増加し、現在も増え続けているという(図)。
肺非結核性抗酸菌症の増加は、1980年ごろから始まっているようだ。
森本医師によると、まず呼吸器内科医など関係者の間で「増えているのではないか」という実感があったという。
2000年以降、増加が顕著になっていると思われたが、データに乏しく、2014年に組織された現・国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)研究班の疫学調査によって、初めて罹患率が結核を超えたことが明らかになった。それが上に示したデータだ。
日本で増えている理由は?
では、日本で増えている理由は何だろうか。
森本医師は、「医療者の間でこの感染症の認知度が高まり、健康診断のレントゲン検査で積極的に見つけるようになったこと」や、「薬物治療などによって免疫が低下した人が増えていること」、「(感染症に弱い)高齢者の増加」などを理由に挙げた。このほか、「明確な答えはまだなく、研究途上」としながらも、日本の特徴として「風呂の習慣と、追い炊き機能など給湯器の進化」も挙げている。
増加している罹患者の内訳を見ると、ある特徴が見えてくる。それは、やせ型の中高年女性に多いという点だ。それまで肺の病気を指摘されたことがなく、たばこを吸っているわけでもないのに、なぜかこうしたタイプの女性がかかっている。
これについて森本医師は、「(女性ホルモンの)エストロゲンや、脂肪の燃焼に関わるホルモンであるアディポネクチンなどのバランスが崩れている(のがリスク)という報告もある。ただ、一致しない研究報告もあり、まだ原因はわかっていない」と話す。
また、中高年の女性は、免疫の異常で起こる膠原病(関節リウマチ、シェーグレン症候群など)にかかりやすいということとも関係している可能性があるという。「しかし、いずれにしても複合的なもので、明確な答えはわかりません」(森本医師)
このほかの背景としては、女性のほうが家事を担うケースが多く、生活習慣的に水の曝露を受けやすいことも一因だという。
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