中国・大連で「グリーンメタノール」大量生産へ 次世代船舶燃料として全世界に供給目指す

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世界の海運業界で船舶の脱炭素の動きが加速している。写真は中国船舶集団の子会社が建造したメタノール燃料船(同社ウェブサイトより)

次世代の船舶燃料「グリーンメタノール」を製造する世界初の年産1万トン級の量産プラントが、遼寧省大連市の長興島に建設される。

浙江省の国有エネルギー企業の浙能集団と国有造船大手の中国船舶集団傘下の大連船舶重工集団が6月27日、同プロジェクトに関する戦略提携の覚書に調印した。総投資額は6000万ドル(約86億円)を見込み、2023年8月からプラントの建設に着手、2024年6月の稼働を目指している。

(訳注:グリーンメタノールは、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーから得られた電力で製造した水素と、火力発電所や石油化学プラントなどから回収した二酸化炭素[CO2]を合成して作られる)

プロジェクトの主たる推進役は、浙能集団の子会社で船舶用エンジンの脱硫システムを手がける浙能邁領環境科技だ。同社は今回のプロジェクトを通じてグリーンメタノールの量産技術を確立し、2024年後半に年産50万トンのプラントを着工。2025年後半から全世界への供給を目指す。

船舶の脱炭素の切り札に

浙能邁領環境科技によれば、同社が製造するグリーンメタノールの販売価格は、現時点のヨーロッパでの市場価格を下回る見込みだ。すでにヨーロッパやアジアの船主が購入の意向を示しているという。

世界の海運業界では今、国際海事機関(IMO)や欧州連合(EU)が進めるCO2排出削減計画の下で、船舶の脱炭素に向けた取り組みが加速している。その切り札となっているのが、燃料にメタノールを使う船舶用エンジンだ。

本記事は「財新」の提供記事です

国際海運大手のデンマークのA.P. モラー・マースクは、2021年に世界初のメタノール燃料コンテナ船を発注。同社が2023年6月末までに発注したメタノール燃料船は、すでに25隻に上る。

同業のフランスのCMA CGMも導入を急いでおり、現時点までにオプション(予備発注)を含めて36隻のメタノール燃料船を発注済みだ。

(財新記者:李蓉茜)
※原文の配信は7月7日

財新 Biz&Tech

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