母の再婚相手から娘が性的虐待を受けている。しかし、その子は性的虐待を受けていることを母に言えずにいる。言えば自分を守ってくれるかもしれないが、母は確実に傷ついてしまう。悩んでいるうちに娘は母の再婚相手との子どもを妊娠してしまった。誰にも相談できず、中絶手術が可能な時期を過ぎてしまったというケース。
「まったく想像になかったことだったので、なんでも否定から入ったらいけないなとあらためて思いました。そして、僕の仕事にも当てはまることだなと考えたんです」(二見社長)
2人と一緒に暮らさないことを選んだ次男、次女、親にも、人に言わないだけで仕方のない事情があったのかもしれない。
兄と姉を亡くした弟が語ったこと
作業も4時間を超えるとだいぶ片付いてきた。仕分けをしていたスタッフが運び出しに回り、5時間足らずで部屋はまっさらになった。次男が生まれたときから、この家はモノだらけだったという。「初めて見るここの壁。こんな狭いとこに6人で住んでいたから、僕の部屋はなかったんですよ」と話す次男に、暗い様子はない。
「悲しい思い出がなくなったなって思って。久々に帰ってきたら兄ちゃんが首吊っていて、この景色を見るとあの姿を思い出すっていうのがあったので。(片付いた部屋を見て)“これからや”とちょっと前向きになれます。2人が亡くなったこと自体はもう変わらないんで、それに引っ張られないようにこれから生きていこうと思います」(次男)
亡くなった2人が暮らした部屋は、ベランダにまでモノがあふれていた。モノが入った状態のタンスの引き出しが積み上がっており、外から見てもだいぶ散らかっている様子が見て取れただろう。
街を歩いていると、同じようにベランダにモノがたまっている部屋を目にすることがある。自分が住んでいるマンションで目にすることもあるかもしれない。そのとき、ただ「汚い」と顔をしかめるのか、その背景に何か事情があるかもしれないと考えるのか。
しかし、背景に思いを馳せたとして、「何か人に言えない事情があるに違いない」と決めつけてしまっては、色眼鏡で人を見ていることにもなる。今、世の中ではSNSを中心にあらゆる思い込みが人を追い込んでいるように思えるが、「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない」と考えることが相手を理解することにつながるのではないか。
この悲しい現場がそんなことを考えさせてくれた。
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