栗山英樹「決死の覚悟」で大谷やダル招集した経緯 WBCまでに栗山氏がノートに書き記した言葉

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彼のお父さんの家系はオランダにルーツがあり、オランダからも声がかかっているとのことでした。カクテル光線を浴びたグラウンドに立つ以前から、私たちの戦いは始まっていたのです。

武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり

選手選考でもっとも難しかったのは、やはりメジャーリーグでプレーする日本人選手の招集です。選手によって状況は異なり、出るか、出ないかは所属チームに委ねられるところもあります。

どちらしても、私の魂をぶつけるしかない。選手と会うためにアメリカへ向かう機上でノートを広げた私は、「武士道と云ふは死ぬ事と見つけたり」の一文を書き記しました。

18世紀の佐賀藩士・山本常朝が武士の心を記した『葉隠』に収められているものです。これまで様々に解釈されてきましたが、私は「死を覚悟するぐらいの気持ちで取り組むことで、自分がやるべきことをまっとうできる」と理解しています。

アメリカではダルビッシュ有や翔平らと会うことになっていましたが、不安しかありませんでした。不安だらけでした。

ひょっとしたら、全員から「NO」と言われるかもしれません。頭に浮かぶのは最悪のイメージばかりですが、命を懸けてでも全員の首を縦に振らせる。「出ます」と言ってもらうまでは日本に帰らない、という覚悟でした。

彼らメジャーリーガーが出場しないとなると、チームの構想が根本から崩れてしまう。私が監督を任された理由のひとつには、翔平との関係性も含まれていたでしょうから、そもそも監督をやることの意味が問われてしまう。

何よりも、誰もが見たいと思えるチームでWBCに臨めないと、日本野球が崩壊してしまうかもしれない。それぐらいの危機感を抱いていましたから、ダル、翔平、吉田正尚、鈴木誠也の4人の日本人選手に、ヌートバーを加えた5人のメジャーリーガーの参加を取り付けた際には、安堵のため息がこぼれました。

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