実際、脳科学的・心理学的には「『叱る』は百害あって一利なし」というのが真実です。
たとえば、次のようなケースです。
●脳は批判的な意見やフィードバックを脅威とみなす。批判によって生じる強い否定的感情は、神経回路へのアクセスを阻害し、認知、感情、知覚の障害を呼び起こす。つまり、人の欠点に焦点を当てることは、学習を促進するのではなく、阻害する。
(アメリカ・ケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究)
(アメリカ・ケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究)
●学生は本能的に、気分が悪くなるような意見やフィードバックを排除し、気分が良くなるようなフィードバックに同調する。実際、ほめられる頻度が高く、批判される頻度が低いほど、つまりほめ言葉の比率が高いほど、生徒は積極的に行動する。
(2020年の『Journal of Educational Psychology』誌掲載の研究)
(2020年の『Journal of Educational Psychology』誌掲載の研究)
●スポーツの現場での言葉による攻撃は、モチベーションや感情とは負の相関がある。否定的な行動変容のテクニック(人格攻撃、能力攻撃、からかい、嘲笑、脅迫、冒涜など)は、何ら効果がない。
(『Journal of Sport Behavior』誌掲載の研究)
(『Journal of Sport Behavior』誌掲載の研究)
このように、「否定的なフィードバックや批判、つまり、『叱る行為』は相手を嫌な気分にするだけで効果がない」ということがあらゆる科学的研究から明らかになっています。
命にかかわる大事な局面でも「厳しく叱る」のはアウト
「いやいや、とはいえ、命にかかわるような大事な局面では、厳しく叱る必要があるだろう」というご意見もあるかもしれません。
しかし、たとえば、「手術室で執刀する先輩医師が、ミスを犯した後輩医師を叱りつける」「飛行機のコックピットの中で、副機長の間違いを機長が厳しく叱る」のも、どちらもアウトというのが、最近の定説になっています。
こうした叱責は将来的に、間違いを犯した人が、それを隠蔽しようとするリスクを高めたり、上長の間違いも指摘できなくなったりしてしまうからだそうです。
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