従来の疲労は“動的疲労”、現代の疲労は“静的疲労”と言い換えることができます。
動的疲労を軽減・解消するには、動きを止めて安静にするとともに栄養を補給し、疲労した筋肉の回復を促すことが有効です。対して、静的疲労を和らげるには、むしろ体を動かして筋肉を伸び縮みさせることが必要。動的疲労には静的休養、静的疲労には動的休養が有効なのです。
では、動的休養で静的疲労が軽減・解消されるしくみについてお話ししましょう。
筋肉には動脈と静脈が通っています。動脈では心臓が血液を全身に送り出す際の圧、つまり血圧によって血液が押し出されますが、静脈ではその力が十分に及びません。それをサポートするのが、筋肉のリズミカルな伸縮によるポンプ作用、“ミルキングアクション”です。
静脈には逆流を防ぐ役割をする弁が複数存在します。筋肉が収縮すると血管が圧迫されて心臓側(中枢側)の弁が開いて心臓に向かって血液が送られ、次いで弛緩すると血管にかかる圧力が減って末端側の弁が開いて血液が流れ込んできます。
筋肉がリズミカルに収縮と弛緩を繰り返すことによって静脈の血流が促され、疲労物質が除去されていくのです。
私たちは体の疲れを感じると、つい体を動かさずに休めようとしがちですが、それでは疲労物質が滞ってしまうためあまり有効ではなく、むしろ疲労を感じる部分をリズミカルに動かして、血流をよくしてあげるべきなのです。
静的疲労は動かすことで解消
首コリも肩コリも典型的な静的疲労です。ですから、疲労を回復させるには、首や肩の筋肉を伸縮させてあげればいいのです。
とはいえ、筋トレのように重い負荷をかけて伸縮させる必要はありません。首コリを感じたら、頭をゆっくりとリズミカルに前後左右に傾けたりひねったりして筋肉を伸縮させ、血行を促進しましょう。肩コリも同様で、肩を上下に動かしたり回したりしましょう。数分程度でも筋肉の血流が増えて、じわーっと温かくなるのが感じられるはずです。
このように筋肉に負荷をかけることなく、大きく伸び縮みさせる運動を、動的ストレッチといいます。
ちなみに、一般的なストレッチとして知られる筋肉を伸ばした状態で静止する静的ストレッチも、筋肉の血流を促すのに有効です。
1つめの理由は、静的ストレッチによって筋肉が弛緩しやすくなるからです。
筋肉はスポーツやトレーニングで強い収縮をしたり、姿勢維持のために弱い収縮を長時間続けたあと、自分では力を抜いたつもりでも無意識のうちに弱い収縮を続けやすく、このため血行が阻害されがちです。 静的ストレッチにはこの無意識の収縮をリセットする効果があるのです。
もう1つの理由は、静的ストレッチにはストレスを和らげる働きもあるからです。
首や肩のコリはストレスとも関わりがあります。動物にとって最大のストレスは敵との対峙ですが、四足動物は敵に対峙すると飛び掛かる準備として、肩をすくめて後足に重心を移します。これには頸動脈を守る意味もあります。
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