ドイツ「空飛ぶクルマ」開発企業、中国進出の課題 深圳のヘリ運航会社と提携、資金調達に不安も

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リリウムは深圳を拠点に、空飛ぶクルマを中国市場に売り込む計画だ(写真は同社ウェブサイトより)

「空飛ぶクルマ」の開発を手がけるドイツのスタートアップ企業「リリウム」が、中国市場に進出する。

同社は6月19日、広東省深圳市宝安区にアジア地域の統括会社を設立すると発表し、同区政府と覚書を交わした。リリウムは深圳を拠点に、広東省・香港・マカオを含む「大湾区(グレーター・ベイエリア)」で空飛ぶクルマを販売する計画だ。

同じく6月19日、中国のヘリコプター運航会社の東部通用航空がリリウムとの提携を発表。同社は空飛ぶクルマの離着陸場を整備するとともに、将来はリリウムの機体を使った運航事業に参入し、機体のメンテナンスやクルーの採用・訓練などのサービスも提供する計画を明らかにした。

2015年に創業したリリウムは、ドイツのミュンヘンに本社と生産拠点を置く。同社は機体の安全性を公的に証明する耐空証明を、欧州航空安全機関(EASA)から2025年に取得することを目指している。

東部通用航空は深圳を本拠地とし、広東省・香港・マカオを結ぶヘリコプターの越境運航許可を持つ唯一の企業だ。中国の空飛ぶクルマの開発企業とも提携し、大都市の空中交通サービスへの参入準備を進めている。

耐空証明の取得が大前提

「リリウムから空飛ぶクルマを100機購入したい。ただし大前提は、リリウムの機体が中国の航空安全当局の耐空証明を取得することだ」。東部通用航空の董事長(会長に相当)の趙麒氏は、財新記者の取材に対してそう述べた。

空飛ぶクルマとは、一般的には電動モーターでプロペラを駆動し、人を乗せて垂直離着陸が可能な飛行機械のことだ。世界各国の航空安全当局は、その耐空証明の認定基準について模索中であり、共通認識の形成にはまだ至っていない。空飛ぶクルマを開発中の企業は数多いが、すでに耐空証明を取得した事例は1つもないのが実態だ。

仮に認定基準が定まっても、耐空証明の取得には長い時間と莫大な費用がかかる。EASAの耐空証明の早期取得を目指すリリウムも例外ではない。

本記事は「財新」の提供記事です

決算報告書によれば、同社は2023年1〜3月期だけで6700万ドル(約95億円)の現金を消費した。一方、2022年末時点の現金残高は2億1900万ドル(約311億円)しかなく、追加の資金調達に失敗すれば、耐空証明の取得以前に資金が枯渇するリスクもある。

(財新記者:方祖望)
※原文の配信は6月20日

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