中国CATL、高容量「凝縮系電池」を独自開発の衝撃 有人の電動航空機や高級EVへの搭載を計画

✎ 1〜 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 23 ✎ 最新
拡大
縮小
CATLの「凝縮系電池」のエネルギー密度は既存製品を大幅に上回る。写真は上海国際モーターショーでの発表会(同社ウェブサイトより)

中国の車載電池最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は4月19日、エネルギー密度を大幅に高めた「凝縮系電池(コンデンスドバッテリー)」と呼ぶ新型電池を発表した。

同社によれば、新型電池はセル単体でのエネルギー密度が1キログラム当たり最高500Wh(ワット時)に達するという。現在量産されている電池のエネルギー密度は、高性能なものでも同300Wh程度だ。

「凝縮系電池を有人の電動航空機に搭載する計画で、パートナーと共同開発を進めている」。CATLのチーフ・サイエンティストを務める呉凱氏は、上海国際モーターショーでの発表会でそう明かした。

一般的に、電池はエネルギー密度が高いほど(過熱や破裂を防ぐための)安全性の確保が難しくなる。呉氏によれば、CATLは独自開発した「凝縮系」の電解質を用いることでその問題をクリアした。この電解質が具体的にどのようなものか、呉氏は情報を明かさなかったが、いわゆる「半固体電池」ではないと述べた。

電解質や負極材の詳細は明かさず

電池の構造は正極、負極、電解質、セパレーター(絶縁材)の主に4つで成り立っており、エネルギー密度は正極および負極に使う材料の組成で決まる。一方、電解質とセパレーターは正極と負極の間で(電荷を帯びた)イオンの移動を媒介するとともに、両極の短絡を防ぐ役割を果たす。

呉氏によれば、凝縮系電池の正極と負極の材料はさまざまな組み合わせが可能だ。1キログラム当たり500Whの凝集系電池の場合、正極にはニッケルの比率を高めた三元(ニッケル・コバルト・マンガン)系の材料、負極には完全新開発の材料を採用したという。この負極材の詳細についても、呉氏は明らかにしなかった。

本記事は「財新」の提供記事です

電動航空機に搭載する凝縮系電池のパッケージには、軽量なラミネートパウチを採用する。しかし、正負極の材料やパッケージを変更して生産コストを抑えれば、高級EV(電気自動車)にも搭載可能だと呉氏は説明した。

CATLはすでにEVメーカーと凝縮系電池の商談を始めており、2023年内に量産を実現できるとしている。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は4月19日

財新 Biz&Tech

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ザイシン ビズアンドテック

中国の独立系メディア「財新」は専門記者が独自に取材した経済、産業やテクノロジーに関するリポートを毎日配信している。そのなかから、日本のビジネスパーソンが読むべき記事を厳選。中国ビジネスの最前線、イノベーションの最先端を日本語でお届けする。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT