EV(電気自動車)向け車載電池の主要原料であるリチウムの相場が、下げ足を一段と速めている。EV市場の成長鈍化により車載電池の在庫が積み上がり、電池メーカーの(原材料に対する)購買意欲が落ちているためだ。
非鉄金属情報サイトの上海有色網のデータによれば、電池向け炭酸リチウムの3月22日時点の取引価格は1トン当たり29万元(約556万円)と、過去1カ月間で30%も下落。2022年11月につけた同60万元(約1150万円)の最高値から、4カ月余りで半値以下になった。
リチウム相場は2月から下落ペースが加速し、1日当たりの下げ幅が5000~1万元(約9万6000~19万2000円)に達している。
「値下がりのテンポが速すぎて、現物市場のスポット価格が電池メーカーや電池材料メーカーの長期契約価格を下回る逆転現象が生じた。業界内には長期契約の不履行や貨物引き取りの一時停止などが広がっている」。財新記者の取材に応じたあるアナリストは、実態をそう解説した。
天風証券が3月21日に発表した調査レポートによれば、電池の正極材料メーカーによる炭酸リチウムの調達価格はすでに1トン当たり30万元(約575万円)を割り込み、なかには同20万元(約383万5000円)で買い付けたケースもあるという。
EVのコストダウンに期待も
では、リチウム相場はどこまで下がり続けるのか。天風証券のレポートは、過去2年間に新たに生産を開始したリチウム鉱山の生産コストを炭酸リチウム換算で1トン当たり10万~20万元(約191万8000~383万5000円)と見積り、それを拠り所に「1トン当たり20万元で底を打つのではないか」と予想する。
仮に近い将来、リチウム相場が底打ちして価格が安定すれば、それは(EVメーカーや電池メーカーが抱える)電池の在庫整理が一段落したことを示唆する。と同時に、電池の原材料コストが大幅に低下したことで、EVや蓄電システムのコストダウンが期待できる。
上述のレポートの試算によれば、炭酸リチウムの価格が1トン当たり10万元下がると、電池セルの生産コストは1Wh(ワット時)当たり0.07元(約1.34円)安くなる。EVの1台当たり電池容量を50kWh(キロワット時)とすると、計算上は3500元(約6万7000円)のコスト削減につながる。
これを現実の相場に当てはめれば、仮に炭酸リチウムがピーク時の1トン当たり60万元から同20万元に下がった場合、EVの電池コストは1台当たり1万4000元(約26万8000円)安くなる勘定だ。
(財新記者:蘆羽桐)
※原文の配信は3月22日
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